研究課題
アルツハイマー病(AD)様中枢インスリン抵抗性が運動昇圧応答に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする.これまでに,Sprague-Dawley(SD)ラットの延髄孤束核に,インスリン受容体拮抗薬を注入することで一過性にインスリン抵抗性にする急性実験では,筋機械受容器反射と筋代謝受容器反射の増大を示唆する結果が得られた.一方で,ラットの側脳室内に,神経毒ストレプトゾトシン(STZ)を注入し,8週間飼育することで,慢性的に脳内インスリン抵抗性としたAD様ラットでは筋機械受容器反射の減弱を示唆する結果が得られた.そこで,循環中枢の変容の可能性を明らかにする目的で,軸索求心路のバイパス電気刺激による昇圧応答を観察することを2022年度の課題とした.神経筋接合遮断薬にて麻痺させたSDラットの頸骨神経の軸索に双極の電極をかけ,運動閾値の10および50倍の強度の刺激を与えることで求心路の全てを賦活化させた.その結果,インスリン受容体拮抗薬を用いた急性インスリン抵抗性ラットでは軸索電気刺激に対する血圧応答は増加し,ストレプトゾトシンを注入した慢性インスリン抵抗性ラットでは,血圧応答は低下するという結果を得た.以上の結果は,中枢インスリン抵抗性が循環調節機構に及ぼす影響は急性期と慢性期で異なることを示唆する.さらに,循環中枢における信号処理(入力に対する出力信号のゲイン)が変化し,運動に対する血圧応答異常に関与していることが示唆された.(PI, UT Southwestern Medical Center, Masaki Mizuno ).
2: おおむね順調に進展している
腎臓交感神経活動の測定ができていないこと,ならびに,アルツハイマー病様動物の第四脳室にインスリン注入をした影響を検討できていないことから, おおむね順調とした.
最後に残された課題である,中枢へのインスリン投与により,慢性インスリン抵抗性による骨格筋反射性昇圧応答減弱が抑制(是正)されるのかを明らかにする.Sprague-Dawleyラットの側脳室内に, 神経毒ストレプトゾトシンを注入し,8週間飼育することで,脳内インスリン抵抗性アルツハイマー病様モデルラットを作成する.そのラットに除脳を施し,無麻酔状態にて,一定の強さで受動的に下腿三頭筋をストレッチさせることで,運動時の機械刺激を模擬する.また,代謝受容器のアゴニストであるカプサイシンを投与することで,運動時の代謝刺激を模擬する.各種刺激に対する骨格筋反射性の腎臓交感神経活動,心拍,血圧応答を測定する.それを中枢インスリン投与前,30分,60分後に実施し,中枢へのインスリン投与の影響を検討する.
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 5件)
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