研究課題
アルツハイマー病(AD)に観察される中枢インスリン抵抗性が運動昇圧応答に及ぼす影響を明らかにすることを本研究の目的とした.これまでに,Sprague-Dawley(SD)ラットを対象とした一過性のインスリン抵抗性を模擬した実験では,筋機械・筋代謝受容器反射の増大を示唆する結果が得られた.一方,ラットの側脳室内に,神経毒ストレプトゾトシン(STZ)を注入し,慢性的に脳内インスリン抵抗性を誘発した認知機能低下ラット(STZラット)では筋機械受容器反射の減弱を示唆する結果が得られた.中枢における神経入力に対する出力変容を明らかにする目的で,軸索求心路の電気刺激による昇圧応答を観察した結果,インスリン受容体拮抗薬を用いた急性インスリン抵抗性では血圧応答は増加した.一方,慢性インスリン抵抗性のSTZラットでは,血圧応答は低下するという結果を得た.最後に,中枢へのインスリン投与により,慢性インスリン抵抗性による骨格筋反射性昇圧応答の減弱が抑制(是正)されるかを検討した.除脳動物に対して,脳内インスリン投与前,30,60分後に血圧応答を測定し,STZ群と対照群の比較を行った.その結果,筋機械受容器反射(下腿三頭筋ストレッチ)と筋代謝受容器反射(局所カプサイシン投与)に対する血圧応答には,群と時間の有意な交互作用は認められなかった.一方,軸索求心路の電気刺激による昇圧応答においては有意な交互作用を認めた.しかし,STZ群の減弱化した昇圧応答がインスリン投与によって回復(是正)する現象は観察できなかった.以上の結果より,STZ投与による慢性の脳内インスリン抵抗を示す動物への運動様刺激に対する昇圧応答の低下は,一過性のインスリン脳内投与では是正に至らないことが示唆された.(PI, UT Southwestern Medical Center, Masaki Mizuno)
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 4件)
Autonomic Neuroscience
巻: 250 ページ: 103128~103128
10.1016/j.autneu.2023.103128
American Journal of Physiology-Regulatory, Integrative and Comparative Physiology
巻: 325 ページ: R13~R20
10.1152/ajpregu.00327.2022
Scientific Reports
巻: 13 ページ: 13585
10.1038/s41598-023-39633-1
The FASEB Journal
巻: 37 ページ: e23141
10.1096/fj.202300879RR
Japanese Journal of Physical Fitness and Sports Medicine
巻: 72 ページ: 305~313
10.7600/jspfsm.72.305