研究実績の概要 |
音楽家の脳機能の解明、特に音楽機能と認知機能の関連性や両機能を支える神経基盤の解明を目的とし、以下の通り研究を推進した。(1) 研究分担者と連携し、マルチモーダル脳機能イメージング手法(核磁気共鳴画像法 [MRI]、核磁気共鳴スペクトロスコピー法 [MRS]、経頭蓋磁気刺激[TMS]-高解像度脳波[EEG]の同時計測法 [TMS-EEG])を用いた神経科学実験を推進した。(2) 音楽家の認知機能と音楽機能に関して予備的データ解析を実施した。具体的には、音楽家において得られた認知機能評価タスク(RBANS, JART, LNS, EXIT)と音楽機能評価タスク(Harvard Beat Assessment Test: H-BAT)のスコア群について其々主成分分析を施した後、認知機能評価タスク群の第1主成分得点と音楽機能評価タスク群の第1主成分得点間の相関関係を分析した。解析の結果、音楽機能が高いほど、認知機能が高いことが明らかとなった。(3) 協和音の嗜好性と安静時脳機能ネットワークの関連性について予備的解析を行った。その結果、左側坐核ー右上頭頂回、前帯状回ー後上側頭回の安静時脳機能ネットワークが協和音の嗜好性に関連している可能性を得た。(4)演奏評価判断中の視聴覚情報処理過程について調査した。予備的解析の結果、音楽家と非音楽家とで演奏評価判断時の視聴覚情報処理過程が異なる可能性を得た。(5)その他、音楽機能と精神疾患の関連性(本多, 野田, 中島, 藤井, 2021)、歌の科学(北山, サベジ, 藤井, 2021)、コロナ時代の音楽(村井, 真鍋, 藤井, 2021)、音楽表現の発展可能性(田中と藤井, 2021)、巧みな音楽演奏にみられる時間ゆらぎとグルーヴ(藤井, 2020)について総説・解説記事をまとめて発表した。
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