研究課題/領域番号 |
20H04093
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研究機関 | 株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所(Research Lab.) |
研究代表者 |
平野 雅人 株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所(Research Lab.), Research Lab., 研究員 (40852223)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 体性感覚 / 熟練運動スキル / 感覚トレーニング / 運動制御 |
研究実績の概要 |
2020年度に実施した実験により,アクティブタッチのトレーニングに伴い運動中の体性感覚情報の精度が向上することが分かった.本年度はその機序を検証するために行動実験と神経生理実験を実施した. 運動をする際,中枢神経系はこれから入力される感覚情報を予測する.知覚は,予測した感覚情報と実際に入力された感覚情報を統合した情報に基づき形成されると考えられている(感覚予測統合).そこで,統合された情報がどちらの感覚情報へ大きく依存しているかどうか,それがアクティブタッチのトレーニングで変化するかどうか明らかにすることを目的とした行動実験を実施した.感覚予測統合における両感覚情報への重み付けはSensory attenuationを計測することで間接的に評価した.その結果,アクティブタッチのトレーニングに伴いSensory attenuationが減弱することが分かった.つまり,トレーニングに伴い,感覚予測統合において実際に入力される感覚情報への依存度が高まることが示唆された. 次に,アクティブタッチのトレーニングに伴う脳神経可塑性を評価するための実験手法,解析手法,セットアップを確立するための検証を行った.アクティブタッチのトレーニングでは微小な体性感覚情報の変化に対する知覚が変化するため,脳神経活動の変化を高い感度で測定できる手法が求められる.そこで,脳波計を用いて体性感覚刺激に対する事象関連電位を計測,多チャンネルから得られた事象関連電位の多変量パターン解析を実施する実験-解析パイプラインを考案した.本年度は,まずこの手法が体性感覚情報処理を高い感度で評価できるか検証する実験を行った.結果,本手法は手指から入力された異なる感覚情報の差を高い感度で検出できることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
行動実験は計画通りに進み,既にデータ解析まで終えることができた.神経生理実験に関しては当初計画していたものと異なる手法を用いることにしたものの,新手法の検証まで終えることができた.以上の理由から研究はおおむね順調に進んでいるといえる.
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今後の研究の推進方策 |
アクティブタッチのトレーニングに伴い感覚予測統合が変化することが分かった.一方,アクティブタッチは,運動の方略を最適化するという能動的探索も重要な要素である.そこで次年度はアクティブタッチのトレーニングと能動的探索の関連を調査する.
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