研究課題
本研究は、胎児期から乳幼児期における腸内細菌叢制御に関与する因子であるαディフェンシンを分泌するPaneth細胞の発達異常が、腸内細菌叢形成の破綻(dysbiosis)を誘導し疾患リスク上昇に関与するとの仮説を立て、そのメカニズムを栄養制御モデルマウスや腸内細菌叢破綻モデルを用いて細胞・分子レベルで証明し、Paneth細胞機能の修復による腸内環境制御機構の正常化を標的とした疾患予防・治療戦略を提案することを目的とする。これまで本研究により、母親のαディフェンシン低下によるdysbiosisが、子のαディフェンシンを低下とdysbiosisを誘導することを示し、Developmental Origins of Health and Disease(DOHad)の発生機序に母親のαディフェンシンを介した腸内細菌叢制御破綻が関与する可能性を示した。2022年度は、母親のαディフェンシン低下を起点とした子のdysbiosis誘導に、胎児Paneth細胞へのエピジェネティク修飾が関与する可能性を検討した。高脂肪誘導によりαディフェンシンを低下させた母親マウスより生まれた子供群、普通食摂取によりαディフェンシンが正常な母親マウスより生まれた子供群、それぞれのPaneth細胞だけを分離し、bisulfite sequencingを実施したところ、高脂肪食母の子は、普通食母の子と比べ、多くの領域でメチル化率が異なることが示された。さらに、両群の胎児腸組織を採取し、オルガノイド培養法を用いた幹細胞ニッシェ活性を比較したところ、高脂肪食母の胎児で幹細胞ニッシェ活性が著しく低下していた。以上のことより、母親のαディフェンシン低下を起点とした子のαディフェンシン分泌量低下は、胎生期におけるPaneth細胞のメチル化による成熟抑制が関与することが示された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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