研究課題
我々は当該年度に以下の実験を遂行した。1)糖尿病性腎症(DN)の発症・増悪におけるChREBPの関与・作用機構の解明:A) CRISPR/Cas9システムを用いて作成したChREBPノックアウトマウスからRNAを抽出してRNAシークエンスに供する準備を進めている。B)東北大学医学部倫理委員会にて承認を得たことから、東北大学病院 腎・高血圧・内分泌科の腎生検組織からのRNA抽出・RNAシークエンスに向けて、DNならびに非DN検体の準備を進めている。2)D532のDN改善効果の機序解明および実用化・臨床応用に向けた構造最適化:A)D532の一端を伸長して末端をビオチン化することにより作成したD532プローブを用いて、アビジン‐ビオチン反応を利用したアフィニティ精製・質量分析にてD532の標的因子の同定を進めた結果、ChREBP自身がD532の標的因子であることが明らかとなった。B)ChIPアッセイの結果、D532がChREBPのDNAへの結合を抑制することが認められた。本結果から、D532が高血糖依存性のChREBP転写活性をDNA結合レベルで抑制することが明らかとなった。C)D532はChREBPの核内移行には影響を及ぼさないことが明らかとなった。D)疎水性であるD532をPMB30Wにてミセル化することにより水溶化が出来ることが明らかとなった。本成果により、今後のD532を用いた非臨床試験・臨床試験に向けて大きく前進できるものと期待される。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していたD532プローブを用いて標的因子の同定、ChIPアッセイ、D532の可溶化が実現したため、おおむね順調に進展していると考えられた。
今後は、1)ChREBP欠損DNマウスから抽出したRNAを用いてのRNAシークエンシング・解析を行うことによりChREBP標的遺伝子を明らかとする、2)ヒトDN腎生検組織から抽出したRNAを用いての定量PCRを行うことにより、ヒトにおけるChREBP標的遺伝子発現を検討する、3)可溶化D532をDNマウスに投与し、その作用を検討する、ことを予定している。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) 備考 (1件)
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