研究課題
肝糖取り込みは、グルコキナーゼ(GK)とその活性調節タンパク質(GKRP)により制御される。研究代表者らは、過栄養・肥満において、GKRPアセチル化によるGK活性阻害が、肝糖取り込み障害・高血糖の原因となることを見出した(Nat Commun 2018)。しかし、過栄養・肥満では、GK活性化も、非アルコール性脂肪性肝疾患や耐糖能障害を誘導することが知られている。そのため、糖脂質代謝恒常性におけるGK/GKRP・肝糖取り込みの役割とその制御の解明は進んでいない。研究代表者は、GKRPアセチル化が代謝と遺伝子発現の両者を制御する可能性を見出している。本研究課題では、GK/GKRP機能に関わる変異マウスを用い、生活習慣病におけるGK/GKRP・肝糖取り込みの役割を解明する。具体的には、GK/GKRPによる代謝制御、GKRP機能を制御するアセチル化の仕組み、GK/GKRPによるヘパトカイン制御の役割の解明を行う。2020年度には、肝GK過剰発現マウスやGKRP変異マウス(126番リジン残基または446番プロリン残基の点変異)を作出し、一部のマウスについてはその表現型の解析を行った。特に、GKRP126番リジン残基の点変異マウスでは、耐糖能の変化を誘導した。また、GKRPのアセチル化酵素同定に用いるため、GKRPにMycタグを、GKにFLAGタグをつけたマウスを作出することで、今後のタグによる組織解析および免疫沈降解析を可能にした。GK/GKRPにより制御されるヘパトカインの一種類を解明し、その欠損マウスを作成した。今年度に作出したマウスに関しては、今後、糖・エネルギー代謝と非アルコール性脂肪性肝疾患の両者に対する作用の解明を進めてゆく。
2: おおむね順調に進展している
2020年度には、肝GK過剰発現マウスやGKRP変異マウス(126番リジン残基または446番プロリン残基の点変異)を作出し、一部のマウスについてはその表現型の解析を行った。具体的には、リジン残基のアルギニン変異、グルタミン変異を作成し、前者は耐糖能の改善を、後者は増悪を来すことを見出した。また、GKRPのアセチル化酵素同定に用いるため、GKRPにMycタグを、GKにFLAGタグをつけたマウスを作出することで、今後のタグによる組織解析および免疫沈降解析を可能にした。これらのマウスでは、両分子のタグ付きたん白質は、ウェスタンブロットで上方にバンドがシフトするため、明確に区別ができる。組織染色とともに、今後の解析に利用できることを見出した。さらに、今年度は、GK/GKRPにより制御されるヘパトカインの一種類を解明し、その欠損マウスを作成した。今後、糖・エネルギー代謝における役割を解明して行く。研究計画は、ほぼ予定通りに進んでおり、おおむね順調に進展していると言える。
本研究課題では、生活習慣病における肝臓糖取り込み制御機構、すなわちグルコキナーゼ/GKRPの役割の解明を目的とし、(1)グルコキナーゼ/GKRPによる代謝制御の生活習慣病における役割解明、(2)GKRPのアセチル化酵素の解明、(3)グルコキナーゼ/GKRPによるヘパトカイン制御の解明を行う。今後は、(1)グルコキナーゼ/GKRPによる代謝制御の生活習慣病における役割解明では、GKRP-KQ/KRマウスと、NAFLDモデルである肝臓グルコキナーゼTgマウスおよびGKRP446番プロリン-ロイシン変異マウスとの表現型比較を行い、グルコキナーゼ/GKRPの糖エネルギー代謝制御および非アルコール性脂肪性肝疾患における役割を解明する。(2)GKRPのアセチル化酵素の解明では、GKRPアセチル化酵素の同定を進め、当該酵素の肝臓特異的なノックダウンおよび過剰発現により、その役割を解明する。(3)グルコキナーゼ/GKRPによるヘパトカイン制御の解明では、肝糖取り込みにより発現変化を来すヘパトカイン(FGF21など)のノックダウンマウス・欠損マウスを用い、これらのヘパトカインの糖エネルギー代謝および非アルコール性脂肪性肝疾患およびにおける役割を解明する。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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