研究課題
肝糖取り込みは、グルコキナーゼ(GK)とその活性調節タンパク質(GKRP)により制御される。研究代表者らは、過栄養・肥満において、GKRPアセチル化によるGK活性阻害が、肝糖取り込み障害・高血糖の原因となることを報告している。しかし、過栄養・肥満では、GK活性化も、非アルコール性脂肪性肝疾患や耐糖能障害を誘導することが知られている。そのため、糖脂質代謝恒常性におけるGK/GKRP・肝糖取り込みの役割とその制御の解明は進んでいない。本研究課題では、GK/GKRP機能に関わる変異マウスを用い、生活習慣病におけるGK/GKRP・肝糖取り込みの役割を解明する。具体的には、GK/GKRPによる代謝制御、GKRP機能を制御するアセチル化の仕組み、GK/GKRPによるヘパトカイン制御の役割の解明を行う。2021年度には、肝GK過剰発現マウスやGKRP変異マウス(126番リジン残基点変異)の表現型の解析を行った。GKRP126番リジン残基点変異マウスでは耐糖能の変化を呈するが、特にアセチル化模倣変異では、肝糖取り込み障害による耐糖能の低下を、非アセチル化模倣変異では耐糖能の増強を呈する事を明らかにした。GK/GKRPの細胞内局在およびアセチル化酵素の解明のために、GKRPにMycタグを、GKにFLAGタグをつけたマウスを作出し、これらのタグによって、各マウス肝臓からGK/GKRPの免疫沈降が可能であることを見出した。今後も、GK/GKRPの変異マウスの解析を通じて、糖・エネルギー代謝と非アルコール性脂肪性肝疾患の両者に対するGK/GKRP作用の解明を進めてゆく。
2: おおむね順調に進展している
2021年度には、肝GK過剰発現マウスやGKRP変異マウス(126番リジン残基点変異)の表現型の解析を行った。具体的には、GKRP126番リジン残基点変異マウスでは耐糖能の変化を呈するが、特にアセチル化模倣変異では、肝糖取り込み障害による耐糖能の低下を、非アセチル化模倣変異では耐糖能の増強を呈する事を明らかにした。GK/GKRPの細胞内局在およびアセチル化酵素の解明のために作出したGK/GKRPタグ挿入マウスの有用性を確認した。これらのタグによって、各マウス肝臓からGK/GKRPの免疫沈降が可能であることを見出した。2020年度では、これらのマウスでGK/GKRP免疫染色が可能であることを見出したが、これらの解析手法が利用可能であることを見出した。GKRP変異マウスでのFGF21欠失マウスモデルを作成し、糖エネルギー代謝解析を行った。FGF21欠失によりGKRP変異による耐糖能変化が増強することを見出した。これらの結果から、研究計画は、ほぼ予定通りに進んでおり、おおむね順調に進展していると言える。
本研究課題では、生活習慣病における肝臓糖取り込み制御機構、すなわちグルコキナーゼ/GKRPの役割の解明を目的とし、(1)グルコキナーゼ/GKRPによる代謝制御の生活習慣病における役割解明、(2)GKRPのアセチル化酵素の解明、(3)グルコキナーゼ/GKRPによるヘパトカイン制御の解明を行う。今後は、(1)グルコキナーゼ/GKRPによる代謝制御の生活習慣病における役割解明では、肝GK過剰発現マウスおよびGKRP変異マウスの糖エネルギー代謝表現型の比較解析を行ってきたが、今後は、非アルコール性脂肪性肝炎誘導条件に対する各マウスの表現型(肝慢性炎症および線維化、糖エネルギー代謝)を比較し、グルコキナーゼ/GKRPの非アルコール性脂肪性肝疾患における役割を解明する。(2)GKRPのアセチル化酵素の解明では、培養肝細胞およびマウス肝臓において、当該酵素のノックダウンおよび過剰発現を行い、その役割を解明する。(3)グルコキナーゼ/GKRPによるヘパトカイン制御の解明では、FGF21を始めとしたヘパトカインノックダウン・遺伝子改変を肝GK過剰発現マウスおよびGKRP変異マウスで行い、これらのヘパトカインの糖エネルギー代謝および非アルコール性脂肪性肝疾患およびにおける役割を解明する。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
NPJ Syst Biol Appl.
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https://inoue.w3.kanazawa-u.ac.jp/index.html