研究実績の概要 |
1.腸培養細胞であるCaco-2細胞にFOSを投与し、総RNAを抽出し、mRNAマイクロアレイを実施し、FOSで増大する遺伝子を網羅的に探索した。その結果、小腸様Caco-2細胞にFOSを投与すると、密着結合を強めるようなCLDNの発現様式(CLDN4/CLDN2の上昇)に変化した。さらにFOSにより、CCL2, ITGA2, F3やβグルカン受容体CLEC7などの炎症促進遺伝子のmRNA発現量の増加および抗酸化関連遺伝子の発現低下が確認された。さらにPathway解析では炎症促進に関連する遺伝子群(TNF, ITGB3, ITGB8, ITGA2, ITGA5, ITGA6, HIF1A, CCL2)、密着結合を強固にする遺伝子群(EGF, CAV1, LAMA3)の発現上昇が確認された。次に、日本人のような2型糖尿病を自然発症するNSYマウスにFOSを投与した。その結果、血糖コントロールの改善は見られなかったが、腎症(メサンギウム基質の増大)の顕著な改善が見られた。 2.着床前胚へのαMEM培地に暴露し子宮に戻したマウス(MEMマウス)に離乳以降に高脂肪・高少糖食を投与するとによって、脂肪肝炎が生じることが明らかとなっている。そこで、MEMマウスの脂肪肝炎発症にGene bodyのエピゲノムが関与するかを調べた。その結果、MEMマウスにおいて、脂肪滴形成遺伝子CidecおよびPlin4の発現増大および同遺伝子周辺のヒストンH3K9アセチル化、アセチル化リーダーBRD4/酵素CBPの結合の増大が観察された。 上記により胚発生期の栄養不良が生後のGene bodyエピゲノムの撹乱すること、Gene bodyエピゲノムを改善しうるFOS投与が、腸や腎臓の障害を抑制しうることが明らかになった。
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