研究課題/領域番号 |
20H04104
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
室田 佳恵子 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 教授 (40294681)
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研究分担者 |
高橋 信之 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (50370135)
早坂 晴子 近畿大学, 理工学部, 准教授 (70379246)
中村 俊之 岡山大学, 環境生命科学学域, 助教 (90706988)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リンパ輸送 / フラボノイド / 生体利用性 / 機能性 |
研究実績の概要 |
フラボノイドは代表的な機能性食品成分であり、その生体利用性を明らかにすることは作用機序解明に重要である。本研究においては、リンパカニュレーションラットを用いて、どのような構造を持つフラボノイドがリンパ系に輸送されやすいのかを明らかにし、またフラボノイドのリンパ輸送の生理的意義を解明することを目的としている。フラボノイドの構造とリンパ輸送の関係性については、血漿/リンパ液の分配比がフラボノイドの基本骨格により異なることが示唆されている。この時、通常脂質吸収経路としての役割を果たすリンパ液への輸送であるが、食品中に存在するフラボノイドの極性はリンパ輸送の要因とはならないと考えられた。現在さらに種類を増やして構造輸送相関を検討している。また、一部の配糖体が直接リンパ液に出現することを明らかにした。リンパ系へ輸送されたフラボノイドの生理的役割については、既にリンパ液へ輸送されることを明らかにしているケルセチンとアピゲニンを中心に影響を調べたところ、リンパ管内皮細胞における炎症時の応答に対する抑制効果はフラボノイドの構造により異なることが示唆された。しかし現時点では、どのような分子内構造が活性発揮に重要かは明確でなく、特にフラボノイド基本骨格と抱合代謝による活性変化に着目しながら、引き続き検討している。また、リンパ液へ輸送されるフラボノイドの標的と考えられるリンパ節におけるフラボノイドの作用を探索するため、樹状細胞を用いた実験系の確立を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リンパ系輸送経路を選択するポリフェノール構造の解明については、これまでにアピゲニンとその配糖体に着目して、これまでに実施したケルセチンを投与した時との血漿とリンパ液中代謝物を解析比較し、基本骨格の違いが血漿/リンパ液の分配比を変化させることが示された。この時、ポリフェノールのリンパ系輸送に対するdriving forceについては、フラボノイド自体の疎水性の強さではなく、腸管吸収の際の可溶性を促進する成分との共存により吸収性が上昇するのに伴い、リンパ系輸送も増加することが示唆されている。また、配糖体の一部がそのままリンパ液中に出現することを見出した。フラボノイドのリンパ系輸送の生理的役割の解明においても、リンパ液への出現しやすさとリンパ管内皮細胞に対する影響には一部だが合致が見られており、今後の展開が期待される成果を得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
1)リンパ系輸送経路を選択するポリフェノール構造の解明(担当:室田、中村) フラボノイドの化学構造に着目し、リンパカニュレーションラットを用いて、どのような構造を持つフラボノイドがリンパ系に輸送されやすいのかを明らかにする。次年度はケルセチン、アピゲニンの類縁体であるルテオリン、ケンフェノール、さらにフラバノン骨格を有する分子を用いた基本骨格構造の違いによる吸収性について検討する。また、糖鎖修飾の影響についてはルテオリンを用いた配糖体構造の違いに着目する。 2)ポリフェノールのリンパ系輸送に対するdriving forceの同定(担当:室田、高橋) リンパカニュレーションラットへの投与時に共存させる脂質の種類や量の影響を検討することで、リンパ系輸送のdriving forceは何かを明らかにする。ヒト小腸モデルとして汎用されているCaco-2細胞を用いて条件検討を実施しているが、今後はフラボノイドの可溶性への影響に加えて、脂質等の共存物質による腸管粘膜への影響を合わせて検討する、 3) フラボノイドのリンパ系輸送の生理的役割の解明(担当:早坂、室田) リンパ管内皮細胞に作用するフラボノイドのリンパ液中代謝物を用いた活性評価を行う。さらに、内皮細胞以外の標的として樹状細胞に対する影響評価を開始する。また、腸管リンパ節に対するフラボノイド類の影響について、実際にフラボノイドを投与したラットから腸管リンパ節を採取して影響を調べる。
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