研究課題/領域番号 |
20H04109
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
三好 規之 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (70438191)
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研究分担者 |
吉川 悠子 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (00580523)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ジオスゲニン / ステロイドホルモン / 腸内細菌異化代謝 |
研究実績の概要 |
自然薯有効成分ジオスゲニンを食品成分として摂取した場合、消化管微生物がジオスゲニンを異化代謝し、強烈な活性分子へ変換するメカニズムが存在することを支持する学術的根拠が蓄積してきてきた。ジオスゲニンは、ステロイド側鎖にスピロ環を有するステロイドサポゲニンなので、ステロイド異化代謝の法則を紐解くことができれば、動物ステロイド、植物ステロイド、昆虫ステロイドなど無限のステロイドを相手に有用ステロイドを探索できる。本研究では、ジオスゲニン異化代謝菌と代謝物を探索・同定し、食品科学・創薬・医療分野での貢献を目指している。 Diosgeninは近年多様な生理機能が報告されている機能性成分であり、予備検討より、diosgenin摂取が血糖値上昇抑制および糖質代謝に関わる糖質コルチコイドの産生を抑制することが示唆された。そこで本年度は、糖質コルチコイドをはじめとするステロイドホルモンを産生するマウス副腎皮質腫瘍細胞 (Y1 cell) に対し、diosgenin曝露試験を実施することにより、in vitro におけるステロイドホルモン生合成に対するdiosgeninの影響を検討する。さらに、diosgenin生合成酵素発現を促進するcAMPとdiosgeninの共曝露試験を実施することで自然薯含有成分diosgeninの機能性を評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、diosgeninによるステロイドホルモン産生遺伝子発現への影響を評価するために、ステロイド合成律速因子であるcholesterol輸送タンパク質StAR、ステロイド産生因子-1 (SF-1)、cholesterol側鎖切断酵素 (CYP11A1) の遺伝子発現を解析したところ、曝露時間に関わらず、StAR、SF-1、CYP11A1の発現は有意に誘導されなかった。次に、cAMPおよびdiosgeninによるステロイドホルモン産生遺伝子発現への影響を検討した。cAMPは、アデニル酸シクラーゼより、ATPから合成されるセカンドメッセンジャーであり、細胞内においてプロテインキナーゼA (cAMP依存性プロテインキナーゼA; PKA) を活性化し、ステロイドホルモン産生に関わる遺伝子の発現を制御する。StARおよびSF-1の遺伝子発現量は、cAMP (50 µM) 曝露によりコントロール群と比較して上昇した。さらに、SF-1の遺伝子発現の上昇により、ミトコンドリア内におけるcholesterolからpregnenoloneへの変換を触媒する酵素CYP11A1の遺伝子発現が上昇したと示唆された。一方、cAMP (50 µM) およびdiosgenin (5, 10 µM) の共曝露においては、StARおよびSF-1の遺伝子発現量は、cAMP単曝露群と比較して変化しなかった。一方で、CYP11A1の遺伝子発現量は、diosgenin濃度依存的に減少した。したがって、diosgeninを曝露することにより、cAMP/PKA経路を介したCYP11A1の遺伝子発現上昇は抑制され、細胞内膜からミトコンドリア内に取り込まれたcholesterolの側鎖切断反応が抑制されたことが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き続副腎由来培養細胞を用いて、ジオスゲニンによるステロイドホルモン分析(LC-MS)を実施する。 ジオスゲニン代謝物のノンターゲット分析(LC-MS)を実施する。 ジオスゲニン投与マウス血液中のステロイドホルモン分析(LC-MS)を実施する。
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