研究課題/領域番号 |
20H04110
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
石川 智久 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (10201914)
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研究分担者 |
河田 則文 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (30271191)
濱島 義隆 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (40333900)
山口 桃生 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (30804819)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | NASH / 肝星細胞 / 肝線維化 / DIF-1 |
研究実績の概要 |
肝星細胞(Hepatic stellate cell: HSC)は、肝障害時に活性型へと形質転換して筋線維芽様細胞となり、コラーゲンを産生・分泌するようになる。一方、静止型HSCにはマトリックスメタロプロテイナーゼ産生能があり、コラーゲンを分解する活性を有する。すなわち、活性型HSCを静止型へと脱活性化できれば、肝線維化も治療可能であると期待される。申請者らは、細胞性粘菌由来低分子化合物DIF-1がHSCの活性化を抑制することに加え、活性型HSCを静止型HSC様に脱活性化させることを見出した。本研究では、このDIF-1を利用することで活性型HSCの脱活性化機構を解明すること、およびDIF-1をリード化合物として肝線維化治療薬の開発に向けた基盤的知見を得ることを目的とした。 今年度は主に、DIF-1(1-((3,5-ジクロロ)-2,6-ジヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1-ヘキサノン)をリード化合物として合成した各種DIF-1誘導体を用いた構造活性相関解析を行った。脱活性化作用の検討には、ヒト肝星細胞株LX-2細胞を用いた。まず、TGF-β1処置により増大したⅠ型コラーゲンα1(COL1A1)の発現を、DIF-1が濃度依存的に減少させることを確認した。構造活性相関解析の結果、芳香環のカルボニル基はHSC脱活性化作用に必要であることが示された。一方、DIF-1の長鎖を短縮させても、芳香環のメトキシ基を脱メチル化しても、さらにCl基を脱Cl化しても、HSC脱活性化作用は認められた。すなわち、活性を維持したまま水溶性を上げることが可能であることが示唆された。また、DIF-1長鎖へのビオチン付加により、DIF-1結合タンパク質の探索が可能であることも示された。こうした知見を基に、今後、DIF-1誘導体のin vivoでの脱活性化作用の検証、およびその作用機序の解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度予定していたDIF-1をリード化合物として合成した各種DIF-1誘導体を用いた構造活性相関解析の結果、HSC脱活性化に必要なDIF-1の構造を明らかにすることができた。さらに、最終年度に予定していたNASHモデルマウスを用いた治療解析に関しても、既に肝組織サンプルの回収はいくつか終えており、おおむね順調な進捗といえる。
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今後の研究の推進方策 |
DIF-1 によるHSC脱活性化のシグナル経路の解析を行う。初年度に実施したRNA-seq解析の結果を基に、DIF-1の標的分子の候補、及びDIF-1によるHSC脱活性化に伴い発現が変動する分子について、CRISPER/Cas9を用いてノックアウトもしくはノックインさせたマウス初代培養HSCを作製し、脱活性化作用への寄与を調べる。また、長鎖にビオチン付加したDIF-1誘導体を利用して、DIF-1結合タンパク質を解析することにより、DIF-1の標的分子の同定、及びDIF-1によるHSC脱活性化のシグナル経路の解析を行う。 また、DIF-1誘導体を用いた構造活性相関解析を引き続き実施し、より効果の高いNASH治療薬の創出を目指した検討も行う。コリン欠乏高脂肪食摂餌、GAN diet摂餌、高脂肪食摂餌+thioacetamide腹腔内投与により作製した3種類のNASHモデルに化合物を投与し、その効果を解析する。さらに、tamoxifen 処置によりI 型collagen α2 を発現する活性型HSCがGFP標識されたCol-α2(I)-GFP マウスを作出し、活性型HSC追跡実験を実施する。
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