研究課題/領域番号 |
20H04117
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
宮地 元彦 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (60229870)
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研究分担者 |
國澤 純 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 ワクチン・アジュバント研究センター, センター長 (80376615)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マイクロバイオーム / 身体活動 / 食事 / N-of-1研究 / 介入 |
研究実績の概要 |
本研究では、一人の被験者の1年間の糞便採取から得られる腸内細菌叢群衆構造と、24時間365日の身体活動や睡眠と食事・静養摂取のデータを収集し詳細に解析することで、「野菜摂取量、たんぱく質摂取量、運動量の増加は腸内細菌群集構造を変化させる」との仮説の妥当性を検討することを目的にした。 2021年9月1日から2022年8月31日までの1年間約52週間にわたり、一人の被験者に対し、野菜摂取増加、たんぱく質摂取増加、運動量増加の1週(7日)単位の介入と除去を各6回ずつ繰り返し、その間の全ての糞便と被験者の身体状況と24時間365日の生活習慣を観察・記録することで、生活習慣変動が腸内細菌叢群集構造の個人内変動に及ぼす影響を経時的に明らかにする、N-of-1交差介入試験を実施した。2022年4月27日まで順調に研究が進行中であり、その途中経過を報告する。 ウエアラブルデバイスによる身体活動、睡眠記録及び栄養解析アプリによる食事記録は、1日の欠損もなく239日間の観察が完了しており、継続している。また、239日間のうち194回の排便観察の結果、発酵野菜ペーストを用いた野菜摂取量増加、エネルギー比で20%以上、摂取量で100g/日以上のタンパク質摂取増加、1日10kmのランニングによる運動量増加の3つの介入期間では、普段の生活を送る対照期間および介入の効果を除去するための洗い出し期間と比較して、排便頻度の増加、ブリストルスケールにおける良いと判定される3-5の便形状の割合の増加など、より良い排便を導くことが明らかとなった。また、165回分の便(排便のあった日の最初の排便)からDNAを抽出し、16SrRNA法でシーケンスが完了し、現在fastqファイルの調整ならびに全便の腸内細菌叢群衆構造を解析中である。 今後野菜摂取量の増加と腸内細菌叢や排便状況の変化との関連を詳細検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響により、研究者と参加者との間での、身体測定やサンプル受け渡しなどの感染予防対策の立案と整備に時間を要したため。研究期間2年目(全研究期間4年のうち)の2021年9月以降、約1年遅れであるが介入・観察・測定・解析が進行している。また、これまでの研究期間中、研究参加者、研究者ともに、新型コロナウイルス感染症や感冒などの感染症への罹患はなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年8月31日までの期間に野菜摂取量増加、タンパク質摂取量増加、運動量増加の介入期間がそれぞれ2週ずつ残っており、計画通り介入を実施するとともに、毎日のウエラブルデバイスによる身体活動、睡眠の観察、食事記録、採便を実施していく。 糞便抽出DNAのシーケンスにより得られたFastqファイルから、Qiimeをパイプラインとして菌種を同定し、低品質配列、キメラ配列を除去、Silvaデータベースを参照し、97%の類似度を持つ16S rRNA遺伝子配列群(OTU)を同定し、門、属レベルで各菌の存在比を求める。Rパッケージphyloseqを用いてOTUレベルの菌叢構成よりBray-Curtis指数を求め、veganのenvfit関数を用いて、Bray-Curtis指数と宿主の背景情報との関連を解析していく。 2022年8月31日の研究期間終了後に、全ての腸内細菌叢構造解析ならびに参加者の身体状況や生活習慣のデータを統合し、腸内細菌叢と生活習慣のデータを格納するためのデータウエアハウス(構築済み、Chen et al. PlosONE, 2020)に格納する。 ウエアハウスに格納されたベータベースから得られる研究成果を、学会発表や論文投稿などの形で学術的に取りまとめていく予定である。
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