研究課題
肥満者では,随伴する腸内細菌叢の異常と菌体成分リポ多糖 (LPS) の産生増加により代謝性高LPS血症を来す.LPSは,Gut-Muscle axisやGut-Liver-Muscle axisのルートを介して骨格筋において炎症・酸化ストレスを惹起し,サルコペニアの形成に関与する.Nrf2は,抗酸化関連遺伝子群の発現を制御する生体の酸化ストレス防御の司令塔であり,LPS誘導性のサルコペニアに対して防御的に機能する可能性がある.また,サルコペニアは,Muscle-Liver axisを介して非アルコール性脂肪性肝炎 (NASH) 発症・進展のリスクを増大させることが判明している.本研究では,サルコペニアおよびNASHに対してNrf2が果たす役割を検証するため,筋細胞にのみNrf2を発現する筋細胞特異的Nrf2遺伝子レスキューマウスを新たに作製し,高脂肪果糖食の摂餌下,Nrf2-筋レスキューマウスとNrf2-KOマウスの表現型を比較した. Nrf2-筋レスキューマウスの骨格筋では,Nrf2-KOマウスと比較して,遅筋線維の萎縮が抑制されていた.また,ミトコンドリアの含有と活性を示すSDH染色の染色強度が高値であった.Nrf2-筋レスキューマウスの筋組織では,Nrf2下流の抗酸化因子の発現が増加しており,筋Nrf2は,肥満の病態下で骨格筋の酸化ストレスを減弱し,遅筋線維萎縮の抑制,ミトコンドリア機能の維持に寄与する可能性が示唆された.興味深いことに,Nrf2-筋レスキューマウスの肝では,Nrf2を欠損しているにも関わらず,NASH病変が抑制されていた.筋Nrf2によるサルコペニアの抑制は,Muscle-Liver axisを介してNASH病態を改善することが明らかになった.これらの結果は,筋・肝病変の抑止において,Nrf2を標的とした予防・治療アプローチの有効性を示唆するものである.肥満者におけるサルコペニアやNASHに対して,臓器連関の視点から新規治療法を構築する基盤となる可能性があり,今後の発展が期待される.
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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