研究課題
本研究は、有効な治療法の確立されていない脳出血(脳内出血)を対象とし、積極的な栄養学的介入によって予後改善をもたらす手法の提案につながる基礎知見を得ることを目指した。脳出血に伴って生じる機能障害・予後不良の主要因となる病理形成過程を抑止することが期待される食事性成分として、特に脂溶性ビタミン類に焦点を当て、それらの治療的効用に関する科学的根拠の集積を進めた。1)前年度に引き続き、ビタミンA関連化合物の作用についてラット脳より作成した大脳皮質・線条体培養組織切片を用いた解析を進めた。トロンビン誘発性の脳組織傷害に対するビタミンA構造類縁体の保護効果がレチノイン酸受容体のアンタゴニストによって遮断されること、またトロンビンによるTNFα mRNAの発現増大がビタミンA構造類縁体によって抑制されることを見出した。2)ビタミンK同族体であるメナキノン-4の脳出血病態改善効果の機序について検証を進めた。その結果、メナキノン-4を脳内出血誘発3時間後から24時間間隔で経口投与すると、皮質脊髄路を含む内包領域の神経軸索の損傷が抑制されることを見出した。また、メナキノン-4は内包領域の髄鞘の損傷についても抑制する傾向を示した。これらのことから、メナキノン-4は大脳皮質から脊髄に投射する軸索線維束の健常性を維持することによって脳出血に伴う運動機能障害を軽減することが示唆された。3)不飽和脂肪酸がリガンドとして結合することが報告されている核内受容体Nurr1に焦点を当てた検討を進めた結果、合成Nurr1リガンドのC-DIM12が脳出血後の運動機能障害を著明に抑制すること、およびこの効果に内包軸索線維束の保護効果やミクログリアの活性化抑制をはじめとする抗炎症効果が関わる可能性を見出した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (12件)
Bioorg Med Chem Lett.
巻: 85 ページ: 129212
10.1016/j.bmcl.2023.129212
Nutrients
巻: 15 ページ: 581
10.3390/nu15030581
Biol Pharm Bull.
巻: 45 ページ: 1699-1705
10.1248/bpb.b22-00541
Sci Rep.
巻: 12 ページ: 11009
10.1038/s41598-022-15178-7
Cells
巻: 11 ページ: 1230
10.3390/cells11071230