生活習慣病や超高齢社会の加速により、慢性腎臓病(CKD)患者の新規透析導入数は増加している。そのため、CKD重症化予防を目指した新たな先制治療戦略が必要である。本研究は、「血中リン濃度の概日リズム形成機序解明とリン時間栄養療法の開発」を実施するものである。 昨年度までに、NAD+合成律速酵素である、Namptが新しいリン代謝系の調節因子であり血中リン濃度の概日リズム形成に関わること、CKDにおいてNampt/NAD合成系の抑制が生じることを明らかとした。今年度はさらにその機序の解明とリン時間栄養療法の開発に取り組んだ。研究1)肝臓およびNampt特異的欠損マウスと野生型マウスを用いてCKDモデルマウスの作成と血中リン濃度の概日リズムの検討をした。その結果、野生型と比較し、肝臓Nampt欠損マウスでは血中リン濃度の概日リズムが著しく減弱し、高リン血症、腎臓の異所性石灰化、腎臓線維化の重症化が確認できた。研究2)野生型CKDモデルマウスを用いて、摂餌時間のタイミングとCKDの重症化の関連を検討した。結果として同じ栄養成分と食餌投与量であっても、夜食型の摂餌パターンにより血中リン濃度の概日リズムの乱れ、高リン血症およびCKD病態(腎臓の異所性石灰化、線維化など)が著しく進展することが明らかとなった。また血中NADの概日リズムの変動が認められた。一方、朝食型パターンは血中リン濃度の低下と、CKD病態の進展を抑止することが認められた。 これらの成果は、血中リン濃度を上昇させない、時間栄養を考慮したリン管理を可能にし、CKD重症化防の先制時間栄養療法の基盤研究となると考えられる。
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