本研究では、食事誘発性熱産生の駆動原理を解明すべく、食後腸ホルモンのGLP-1 (Glucagon-Like Peptide-1)の求心性迷走神経を介した脳作用と、脳から交感神経系を介した副腎髄質への作用によるアドレナリン分泌促進作用、そして、アドレナリンの代謝臓器を介した体熱産生作用を解析した。本研究では、GLP-1分泌促進成分としてゼロカロリーの希少糖アルロースを用いた。 アルロースによる直腸温上昇作用は、アドレナリンβ2受容体阻害剤によって著しく減弱した。β2受容体を発現する体熱産生臓器として、人体最大の臓器である骨格筋に注目した。神戸大学小川渉教授との共同研究で、骨格筋特異的β2受容体欠損マウスを分与頂いた(Adrb2 flox/flox; MLC1f-Cre)。アルロース単回胃内投与による直腸温上昇作用は、骨格筋特異的にβ2受容体をノックダウンさせることで約1/3まで減弱した。従って、アルロースのGLP-1分泌促進を介した体熱産生作用には、骨格筋細胞に発現するβ2受容体が大きく関与していることが明らかとなった。 全研究期間を通じて、アルロースによる腸GLP-1放出は、求心性迷走神経を介して視床下部X神経を活性化し、中枢神経のX受容体を活性化し、この情報が副腎髄質に伝えられアドレナリン分泌を促進させ、アドレナリンの骨格筋β2受容体への作用が体熱産生を誘導していることが示唆された。
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