研究課題
本研究は水素分子による健康長寿促進を目指して、三つの問いを解明するための包括的研究である。第一に水素分子のプライマリーターゲット探索では、培養細胞系を中心にリピドームとメタボローム解析を行なった。神経芽細胞SH-SY5Yを水素存在下で短時間培養すると酸化ストレスに抵抗性を示す。この時、水素添加1時間後にはカルジオリピンなどの特定リン脂質が上昇し、エネルギー代謝経路が広く抑制され、グルタチオンの低下など酸化ストレスの上昇が認められ、エンドサイトーシスを含む細胞内輸送系も抑制されていた。水素添加を6時間継続すると多くの変化は添加前のレベルに戻った。以上から、水素分子による軽度の一過的ストレスが適応応答を誘導していることが示唆された。さらに幼弱マウスの麻酔ガス吸入時脳細胞死誘発モデルで水素ガス吸入による細胞死抑制メカニズムの解析を進めた。麻酔によるアポトーシスはネスチン陽性の神経幹細胞で生じ、神経発生に関するシグナルが過剰応答しており、水素ガス吸入はこれを抑制した。水素分子のターゲットは神経幹細胞の神経発生シグナル上流にあるものと考えられる。第二に水素分子による過剰免疫応答抑制機序の解明では、デキストラン硫酸塩投与の大腸炎モデルマウスで、水素水を1日1回投与するだけで病態が緩和された。この時、小腸パイエル板での制御性T細胞細胞減少とIL6の発現増加を水素水飲用が抑制されていた。そこでマウスに卵白アルブミンを経口投与したところ、水素水事前飲用で小腸パイエル板樹状細胞への非自己抗原提示が抑制された。この抑制機構が水素水による免疫恒常性に関与しているものと考えられる。第三に臨床応用に向けた研究では、水素ガス吸引療法に必要な混合ガス吸入装置や安全装置などのセットが完了して、ICUで急性大動脈解離Bの患者に水素ガス吸入療法の安全性試験を行ない、順調に症例数が増えている。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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