研究課題/領域番号 |
20H04157
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小出 哲士 広島大学, ナノデバイス・バイオ融合科学研究所, 准教授 (30243596)
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研究分担者 |
田中 信治 広島大学, 病院(医), 教授 (00260670)
玉木 徹 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (10333494)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 計算機システム / 画像認識 / 内視鏡診断支援 / 医用応用のための画像診断システム / ハード・ソフト協調設計 / 集積回路 / 機械学習・深層学習 / 転移学習 |
研究実績の概要 |
消化管内視鏡検査は広く多くの医師により施行されているが、その診断は感性や経験に左右されることがある。コンピュータ診断支援CADは医用画像に対してコンピュータ解析された定量的評価結果を「Second Opinion」として利用するものである。CADは定量的な数値や処理画像を医師に提示することによって、病変の客観的判断を可能にし、診断の正確度向上が期待できる。本年度は以下の4つについ研究を推進した。 (1)消化管画像強調観察内視鏡画像解析による客観的指標の構築: 大腸拡大内視鏡にて、腫瘍性病変および非腫瘍性病変の撮影および動画像の保存を行い、病理組織診断を反映するコンピュータ診断に適したJNET所見分類とNICE分類に基づいた診断基準を設定するための臨床データの集積を行った。 (2)大腸内視鏡画像診断支援のための学習・認識アルゴリズムの改良: 最新の内視鏡による学習用内視鏡画像の集積を行い、一般画像を用いた学習済みAlexNetによる画像特徴量抽出を行う方法を適用し、SVMによる学習・認識アルゴリズム改良を行った。更に、学習済みResNet等のDNNに対して、JNET分類とNICE分類の両方に対して、Fine Tuning等を使用して、新しい識別器の学習・開発も行った。 (3)ソフト・ハード協調設計による画像処理システムの開発: 画像処理の複雑度や並列度に合わせたアルゴリズムの柔軟な高速化が可能な画像処理向け再構成可能なIPであるVision DSPやFPGAをターゲットとし、内視鏡動画像診断支援システムの性能向上を図った。 (4)内視鏡動画像診断支援のためのデータベース構築システムの開発と検証: 臨床データから病変部を取り出し、病変部のトリミングを医師が容易にできるDeep Learningのための学習データ作成ソフトウェアを開発し、データの拡充を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2020年度においては、我々は大腸NBI拡大内視鏡にて同一条件で大腸腫瘍性病変・非腫瘍性病変の撮影およびFull HD画像の静止画像と動画像の集積を行い、この静止画像・動画像を元に内視鏡専門医が病理組織診断を反映する最も悪性度の高い領域の抽出、及び、コンピュータ診断に適した診断基準に基づくデータベース化を行っている。特に、動画像は静止画像と異なり、画像中に色ずれやボケが存在するだけでなく、内視鏡スコープや被写体が動くため、撮影される画像の倍率が一定でない問題点がある。更に、内視鏡の開発は現在も進んでおり新たな機種が開発されている。機種間で内視鏡画像が異なることは周知の事実であるが、そのため機種ごとにデータベースを作成することは診断支援システムの一般化において問題となる。そこで、機種間の相違をなくすため新機種による少数の適切な学習用画像によるデータベースを作成し、深層学習と機械学習を組み合わせた手法の学習方法を改良し、これまで作成したデータベースを再利用することにより、最新の内視鏡システムにおいても使用可能なシステムの基盤技術の開発を行った。そして開発した新しい手法を用いて、最新機種においても病理組織診断を反映して、国内で統一された分類であるJNET分類に対応したType 1, Type 2A, Type 2B, Type 3と非拡大内視鏡の所見分類であるNICE分類に対応したType 1, Type 2, Type 3の両方に対して、高値になるような定量的な数値を医師に提示する画像認識システムの設計に関する基盤技術を開発することができた。これらの研究実績は、当初予定していた計画より進んでおり、また、当初予想されなかった実際の内視鏡の動画像の複雑な画像に対する新しい知見と課題を発見することができ、その課題に取り組むことが可能となり、現在、この課題を解決する方法を開発中である。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に開発した大腸NBI拡大内視鏡診断支援システムは、JNET所見分類加えて、欧米などで用いられている大腸NBI非拡大内視鏡の所見分類であるNICE分類に対しても、分類が可能となった。今後はアルゴリズムの精度だけでなく、感度、特異度などのその他の評価指標も90%以上の高値を提示できるようにアルゴリズムの改良を行う。 また、開発システムでは,JNET分類やNICE分類の病変部分以外のバックグラウンドもそれぞれのタイプによる識別されてしまうため、病変部を正確に捉えない場合には、誤った識別結果を提示してしまう可能性があった。そこで、病変部分以外も識別するために、学習アルゴリズムと識別アルゴリズムの最適化について検討する。更に、広島大学病院・JR広島病院から提供されているJNET・NICE分類の所見分類が行われている、内視鏡の静止画像・動画像を用いて、正常粘膜の部分を抽出し、それを加えて学習アルゴリズムや識別アルゴリズムの改良を行うことにより、大腸NBI非拡大・拡大内視鏡画像の動画像への拡張を行う。 そして、ハードウェアシステムに関しては、2021年度は、内視鏡画像の拡大・非拡大の動画像に対して、病変を広範囲で識別するために、リアルタイム処理が可能なシステムの実現に向けて、研究を推進する。このシステム開発には、2020度と同様にソフトウェアとハードウェアの協調設計が重要な鍵となるため、これまでに開発している協調設計が可能なコンピュータ設計支援ツールと計算の複雑度や並列度に合わせたアルゴリズムの柔軟な高速化が可能なVision DSPやFPGA等の画像処理向けのコンフィギュラブルIPを効果的に使用すると共に、病変の広範囲の識別を可能とするアルゴリズムの高速実行が可能なシステムアーキテクチャを開発し、内視鏡画像診断支援の更なる性能向上を図る。
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備考 |
XILINXプレスリリース, Jul 14, 2020 URL:https://japan.xilinx.com/news/press/2020/hiroshima-university-achieved-faster-medical-diagnosis-with-xilinx-alveo-accelerator-card.html
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