研究課題/領域番号 |
20H04172
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
渡部 康平 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (10734733)
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研究分担者 |
津川 翔 筑波大学, システム情報系, 助教 (40632732)
野中 尋史 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (70544724)
中平 勝也 沖縄工業高等専門学校, 情報通信システム工学科, 准教授 (30500566)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ネットワーク / 生成モデル / ニューラルネットワーク / 通信データ / トラヒック / ネットワークトポロジ |
研究実績の概要 |
本年度においては,主に,下記に示す研究項目に取り組んだ. 1) 任意パラメータの調整技術の開発: 本研究項目では,学習データに類似したデータを生成する技術に,任意パラメータを調整する技術を組み合わせることで,任意パラメータを調整可能なデータ生成器の作成を目指している. 昨年度までに開発したトラヒック生成技術とトポロジ生成技術を拡張する形で,データの特徴量を付加して学習させることにより,生成されるデータ群の特徴量の分布を分化させることに成功した.特に,トポロジ生成技術に関しては,LSTM(Long Short Term Memory)とCVAE(Conditional Variational Autoencoder)を組み合わせた生成モデルを構築することで,高次な特徴量を連続量としてコントロールすることに成功しており,際立った成果を得ることができた. このトポロジ生成に関して得られた成果を IEEE Transactions on Network Science and Engineering へ投稿中である. トラヒック量についても,LSTMをベースにした生成器を開発し,平均や標準偏差などの基本的な特徴量を調整することに成功しており,近日中に発表の予定である. 2) 品質モデルとメッセージ履歴への拡張: 本研究項目では,トラヒックとトポロジ生成で得られた成果を適用することで,品質モデルとメッセージ履歴へ拡張することを目指している. 品質モデルへの拡張を中心に,徐々に取り組みを始めており,電波強度の予測モデルとして適用する場合の予備実験を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度の実施計画としては,前年度までで得られたネットワークトポロジ及びトラヒックに関する類似データの生成技術を更に発展させ,パラメータ調整可能なモデルの実現に目処を付けることが目標であった.前年度までの成果が概ね順調に進捗していたため,そのままスムーズにパラメータ調整可能なモデルへの拡張の検討に進むことができた.前年度から検討していたLSTM(Long Short Term Memory)ベースのCVAE(Conditional Variational Autoencoder)が効果的に機能し,離散量のみならず,特徴量を連続量として取り扱った場合でも調整可能であることが分かった.トポロジ生成モデルにLSTMベースのCVAEを組み合わせることで,高次の特徴量を連続的に調整可能なモデルを実現し,IEEEのトップジャーナルに投稿することができた. 一方,2022年度に計画していた品質モデルへの拡張について,既に検討を始める段階に至っており,当初目標を越える成果を得ている.まだ予備実験の段階ではあるが,適切なデータセットを入手することができれば,問題なく機能するものと考えている. 以上のように,本年度の目標を概ね達成し,一部の課題については目標を超える成果を達成していることから,総合的に見て順調に進んでいると考えいている.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度はトラヒック生成器とネットワークトポロジ生成器の開発を進め,パラメータ調整可能なモデルへの拡張まで研究を進めることができた.2022年度は,パラメータ調整可能なモデルの調整精度の向上を図り,指定した特徴量を持つトラヒックやトポロジをピンポイントで生成可能なモデルを目指す.一方で,当初計画の通り,トラヒックとトポロジの生成器開発の技術を品質モデルとメッセージ履歴へ拡張し,パラメータ調整可能な品質モデルとメッセージ履歴の生成器を開発する. モデルの多くの部分はトラヒックとトポロジ生成で開発したモデルを流用するため,課題遂行のための主なタスクは,大規模データの収集にある. 一方で,パラメータ調整可能なモデルの開発が進むに伴い,既存の生成モデル及び開発中の生成モデルの問題点が明らかになってきている.現在我々が開発しているモデルを含め,既存の生成モデルでは,与えられたデータに含まれないデータ,すなわち外挿を生成する能力はない.しかし,パラメータ調整可能なモデルを応用し,再帰的に周辺部のデータを作成することにより,この問題を克服できると考えている.そこで,2022年度では,当初計画から更に発展して,再帰的生成と再学習により,データ空間を網羅的に含む学習データセットの作成を行う予定である.このデータセットを活用することで,既存のモデルが達成できていない,外挿を生成可能なモデルの構築を目指す.
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