研究課題/領域番号 |
20H04173
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
橘 拓至 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (20415847)
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研究分担者 |
平田 孝志 関西大学, システム理工学部, 教授 (10510472)
浦山 康洋 高知工業高等専門学校, ソーシャルデザイン工学科, 講師 (80805143)
望月 バドル 京都情報大学院大学, その他の研究科, 准教授 (10838460)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ネットワークスライシング / INT技術 / 機械学習 / SDN / P4 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,5G・IoT サービスでの利用が期待されているネットワークスライシングに対して,変動の激しい大容量トラヒックを収容しながら障害から適切に復旧できるように,INT技術および機械学習を用いた資源調整・障害復旧技術を確立する. 今年度は,各ネットワークスライスに対してIn-band Network Telemetry の監視用パケットを確率的に割り当てることで,ネットワーク運用者が冗長なトラヒック増加を抑えつつ容易にネットワークスライスの状況を複数のネットワークスライスに対するネットワーク推定を容易に実現した.さらに,P4プログラムを用いた実験環境も構築した.また,収集したデータを基に深層強化学習を用いた資源割り当て技術を確立した.確立した深層強化学習技術の性能はシミュレーションで評価し,限定された環境ではあるがその有効性を示すことができた.また,サービスチェインで利用する複数のVNFを多段多階層ネットワークスライシングと連携して動的に管理するための技術の検討を行い,特にセキュリティ用のVNFを対象としたVNF配置法とサービスチェイン構成法を確立した.ヒューリスティックアルゴリズムも確立し,その性能評価にも取り組んだ. これらの技術の性能をシミュレーションによって評価し,様々なネットワーク環境下でその有効性を調査した.その結果,深層強化学習を用いた技術については,小規模環境での有効性を示すことができた.また,P4を用いた構築した実験環境において,学習データを収集し,その学習データを対象とした制御技術への拡張も行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はまず,昨年度に確立した割当資源量の最小化を実現するINT専用スライス構築技術を改良し,ネットワークスライスに対する受付制御とスライス資源量の調整を新たなDeep Q-learningによって実現した.この技術では,Deep Q-learningで用いる状態・行動・報酬を変更することで,適切な要求受付と資源調整を達成した.特に,INT用スライスの割り当て資源量を昨年度から10%以上向上させた.また,Deep Q-learningの学習時間を低減するために,新たにヒューリスティックアルゴリズムも確立し,これらの技術・アルゴリズムの性能評価を行った.その結果,規模が小さな限定的な環境ではあるが,提案技術の有効性を示すことができた. 次に,INT専用スライス上に送信するINTパケットに対して,情報を収集するスライスを確率的に割り当ててINTスライス内のトラヒック量および各スライスの処理負荷を抑制する高効率INT技術をP4言語によって構築した.当初の予定では,ONOSも利用予定であったが,入念な調査と試行錯誤の上でP4 のみで確立した.さらに,サービスチェインで利用する複数のVNFを多段多階層ネットワークスライシングと連携して動的に管理するための技術を確立した.特に,セキュリティに対するVNFを対象に技術の確立を行った. P4言語で構築した実験環境では,Deep Q-learningで使用する学習データの生成に取り組み,Deep Q-learningで利用するノードごとのパケット数や到着時刻などのデータを収集できることを確認した.一方で,設定パラメータによっては確立した技術の性能が劣化することも判明したため,今後の改良が必要である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,Deep Q-learningを利用した受付制御と予測情報からネットワークスライスの資源量を増加・減少させて動的に調整する技術を連携させ,予測結果から障害復旧のために適切な資源量をQ-learningによって決定するアルゴリズムを確立する.また,確立した技術で使用する障害復旧用に割り当てる資源量の最小化を実現するINT専用スライス構築技術と予測情報を基にスライスの利用状況に応じたスライスの資源割り当て技術を連携させる.この確立した連携技術を利用するために,INT専用スライスで学習用データを適切に収集するための動的制御技術を開発しP4で実装実験を実施する. そのうえで,最適な収集確率を適用した情報収集INT技術を確立し,さらにヒューリスティックアルゴリズムの確立を目指す.このヒューリスティックアルゴリズムは,性能が遺伝的アルゴリズムの解に近づくように継続して改良を行う.INTパケット選択技術を利用してネットワークの状況を予測しながら収集確率を動的に変更する方式を確立する. 最後に,オープンソースとP4言語を利用して,高効率INT技術を利用するネットワークスライスを仮想実験環境上で構築する.収集確率を動的に変更する技術の実装,機械学習を用いた受付制御による資源調整技術を実装し,最終的にINT専用スライスと資源調整アルゴリズムや受付制御技術との連携方法を実装する.また,開発したシステム上での性能評価実験に取り組んで最終目標の達成を目指す.
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