研究課題/領域番号 |
20H04175
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
大村 廉 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10395163)
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研究分担者 |
宮路 祐一 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50712923)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ウェアラブル・コンピューティング / 無線電力伝送 / 電源管理 / コイル設計 |
研究実績の概要 |
2021年度は当初の計画として,1)コイルサイズ種類の多様化,2)曲げ曲率の多様化,3)実機の製作,4)人体の影響(電力伝送時に人体が受ける影響,および,人体が近くに存在することによる伝送効率への影響)評価を目的とした.このうち,特に1)および,3)について,重点的に研究を推進した. 1)については,これまでスマートウォッチ等を想定し3cm×3cm(以下,3cm)サイズを検討してきたのに加え,様々な部位での使用を見据え1cm×1cm(以下,1cm),5cm×5cm(以下,5cm),10cm×10cm(以下,10cm)を新たに追加し,これまでと同様にズレ,曲げが生じた場合における伝送効率をシミュレーションによって明らかにした.また,3)の実施として,1)の実験で明らかにしたズレや曲げへの耐性が高くかつ高効率なコイル(5cmの正方形コイル,および円形コイル,10cm正方形コイル)の実機を作成して評価を行なった。そして,実際の衣類に実装して装着者の各姿勢における伝送効率の評価を行なった.2)および4)については,主にシミュレーションの不備から有益な結果が得られておらず,原因の特定を行なった. 1)の結果から,衣類上で送信側と受信側コイルが独立にデザインされる場合,双方を5cmもしくは10cmのサイズとし,正方形もしくは円形を用いればズレや曲げに対する耐性をもった伝送が期待できることがわかった. 3)の結果から,シミュレーションと実機でズレや曲げに対する伝送効率の変化はほぼ一致することを確認するとともに,衣類の腰部や足首部に装着したコイル場合にも4種類の姿勢において50%以上の伝送効率で電力伝送が行えることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究で,形状について5種類のバリエーション(円形,正六角形,正方形,長方形,正三角形),サイズについて4種類のバリエーション(1cm,3cm,5cm,10cm)についてシミュレーションを用いて伝送効率の評価を行い,そのズレや曲げに対する耐性を明らかにした.そして,コイルサイズを5cmもしくは10cmmのサイズとし,正方形,もしくは,円形を用いればズレや曲げに対する耐性をもった伝送が期待できることを明らかにした.また,この結果をもとに実機(5cmの正方形コイル,および円形コイル,10cm正方形コイル)の作成を行ない,シミュレーションと実機での結果がほぼ一致することを確認した.さらに,実際に衣類上への実装として,シャツの腰部に5cmの正方形コイル,ズボン腰部に10cmの正方形コイル,ズボン裾(足首)部に5cmの円形コイル,靴下足首部に5cmの正方形コイルを付与し,人体モデルが「立っている」「座っている」「歩いている」「寝ている」の各姿勢を取った状況において,「座っている」の足首での伝送以外,全て50%以上の伝送が行えることを確認した.なお,実機,特に実際の衣類での評価については,予定を前倒しして実施をしている. 一方,曲げのバリエーションの増加および人体の影響に関しては,現時点においてシミュレーションに問題が発生しており,現時点ではまだ十分な評価は行えていないものの,その問題解決の見込みが立っている状態である.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は昨年度より継続して1)曲げ曲率の多様化を行い,より網羅的に衣類上での無線電力伝送に適するコイル形状を明らかにする.また,2)人体の影響(電力伝送時に人体が受ける影響,および,人体が近くに存在することによる伝送効率への影響)評価を行なうとともに,3)統合的なウェアラブルシステムの製作を行なう. 1)について,これまでは手首や足首回りでの曲率半径4cm程度を想定してコイルに対する曲げを作成した.今年度はこれに加え,曲率半径1cm(指回りなどを想定)や20cm(胴回り)などバリエーションを設け、伝送効率の評価を行なう.また、これまで片側のみのコイルに対して曲げを発生させていたが、今年度は両側に曲げが発生した場合についてもシミュレーションの実施を試みる.これにより,衣類上での平面コイルについて、ズレや曲げが発生した際の特性変化に対する網羅的なデータを取得し,無線電力伝送として各コイル形状を用いた際の特性を明らかにする. 2)の人体の影響については,昨年度の検討により人体と同等の誘電率を持つ物体を配置して擬似的な形でシミュレーション評価を行なう方針とした。今後もこの方針を続け、上記1)で行なうシミュレーション評価内に人体の議事モデルを配置し,人体への影響,ならびに,伝送効率双方の観点からその影響の評価できるようにする. 3)統合的なウェアラブルシステムの製作においては,実際にスマートウォッチなどウェアラブルデバイスへ電力を供給する衣類の作成を行ない,最終年度に向けた実証実験の準備を行なう.
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