研究課題/領域番号 |
20H04179
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
會田 雅樹 東京都立大学, システムデザイン研究科, 教授 (60404935)
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研究分担者 |
村田 正幸 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (80200301)
高野 知佐 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (60509058)
多田 知正 京都教育大学, 教育学部, 教授 (10301277)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オンラインソーシャルネットワーク / ユーザダイナミクス / 振動モデル / プラットフォーム技術 / ネット炎上 / 分極化 |
研究実績の概要 |
本研究は,ユーザダイナミクスとオンライン社会ネットワーク構造変化の相互関係を理解するための基本モデルを確立し,それに基づいてオンライン社会ネットワークの構造を適切に誘導することで,ネット炎上などの爆発的なユーザダイナミクスの発生を抑制しつつ,ユーザの活動が適切に活性化された状態を維持することができる技術を確立することを目指すものである.研究計画の具体的な進め方は,研究テーマ(1) ユーザダイナミクスとオンライン社会ネットワーク構造変化の相互関係のモデル化,研究テーマ(2) ユーザダイナミクスとオンライン社会ネットワーク構造変化に関する実証的研究,研究テーマ(3) オンライン社会ネットワーク構造の安定化のためのプラットフォーム技術,という3つの研究テーマに分けて研究を進めてきた. 研究テーマ(1)では,ユーザの振る舞いによって引き起こされるネットワーク構造の変化のモデル化を目指し,2021年度の研究ではユーザの分極化の原因となりうるユーザダイナミクスの偏在現象を記述可能な理論モデルを検討した.このモデルは.特別なネットワークトポロジに対してのみ発生する波動方程式の解が,通常の解と比べて異なる振る舞いをする性質があることを発見したことによる成果に基づいたものである.また,研究テーマ(2)ではユーザ間の非対称リンクの重みを制御することにより,ユーザダイナミクスの強度を制御できる可能性があることを実験的に確認した.これにより,情報伝播の速度を変えることでユーザダイナミクスの強度を制御する技術に結びつく可能性がある.研究テーマ(3)では,ユーザの共感を共鳴現象と関連付けた情報伝播のモデルを検討し,複数ユーザの共感によってユーザダイナミクスが活性化される特性を評価した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,(1) ユーザダイナミクスとオンライン社会ネットワーク構造変化の相互関係のモデル化,(2) ユーザダイナミクスとオンライン社会ネットワーク構造変化に関する実証的研究,(3) オンライン社会ネットワーク構造の安定化のためのプラットフォーム技術という3つの研究テーマに分けて研究を進めている. 研究テーマ(1)では,ユーザの振る舞いとオンラインソーシャルネットワークの構造との間の関係を理解するため,ユーザの分極化やオンラインエコーチェンバー現象,ユーザの集団によるダイナミクスの相乗効果を例にして,それらの現象とネットワーク構造を結びつけるモデルの基礎検討を行った.特に,ユーザの分極化の原因となりうるユーザダイナミクスの偏在現象が,ネットワーク上の波動方程式解のうちで特殊なネットワークトポロジのときにのみ発生する解と類似した振る舞いをすることを突き止めた.また,研究テーマ(2)では,ユーザ間の非対称リンクの重みを制御することにより,ユーザダイナミクスの強度を制御することができる枠組みを実験的に評価し,情報の伝播速度を制御することでユーザダイナミクスの過熱を防止する技術の原理を明らかにすることができた.研究テーマ(3)では,ユーザの共感を共鳴現象と関連付けた情報伝播のモデルを検討し,新しいネット炎上モデルを具体化することができた.
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今後の研究の推進方策 |
研究テーマ(1)では,昨年度までに得られたユーザダイナミクスとオンラインソーシャルネットワーク構造との関係に関する知見に基づき,ネットワークが論理的に繋がっているにもかかわらず情報やユーザダイナミクスの局在化が起こる原理について明らかにし,社会の分極化やエコーチェンバー現象に関する理論モデルを創出する.また,研究テーマ(2)では,情報伝播の遅延を利用したユーザダイナミクスの過熱を抑制する技術の実現可能性を調べて,具体的な制御方式を明らかにする.研究テーマ(3)では,新しいネット炎上モデルを利用したプラットフォーム技術を考察し,多面的市場の活性化に必要な条件を明らかにしていく.
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