研究課題/領域番号 |
20H04190
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
照屋 唯紀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (20636972)
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研究分担者 |
松田 源立 成蹊大学, 理工学部, 准教授 (40433700)
柏原 賢二 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (70282514)
池上 努 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (80245612)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 格子暗号 / 格子基底簡約 / 格子点列挙 / 格子ふるい |
研究実績の概要 |
格子点列挙の効率化について、IWSEC 2020にて論文「Optimization of Search Space for Finding Very Short Lattice Vectors」を発表した。格子点列挙の亜種であるサンプリング法は、与えられた格子の基底と探索空間から決定的あるいは確率的な探索を行うことで、短い格子点を探索する方法である。この方法を使用して、短い格子点を探索することが目標となる。しかし、一般に、発見したい格子点の長さが短いほど探索空間が膨大となるため、素直な方法では実質的に探索困難となる。よって、探索空間の適切な枝刈りを行うことがサンプリング法における重要な課題である。この論文では、従来より議論されて来たrandomness仮定(RA)と、新たに導入した最適探索仮定(BSA)に基づき、サンプリング法について良い探索空間の設定方法を提案した。RAとは、アルゴリズムの性質を確率的に解析する際に導入する仮定であり、計算するまで知ることができない量が一様分布に従うとする確率モデルである。RAを導入することにより、与えられた格子の基底と探索空間から、サンプリング法が出力する格子点の長さの分布が推定可能となる。BSAは、直観的には、RAによって推定した分布から得られた統計量について、主要な統計量である平均値と短い格子点を出力する確率の間に関係が存在すると仮定する。この仮定により、短い格子点を出力する確率を最大化するような探索空間を求める問題が、平均値を最小化する探索空間を求める問題に変換される。そしてこの問題に対して、box-typeと呼ばれる探索空間のうち、平均値を最小化する探索空間を具体的に求める効率的なアルゴリズムを提案した。これにより、短い格子点を格子の基底から生成する計算の効率化が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要で述べたように、格子点列挙については具体的な成果を得た。格子ふるいや格子基底簡約については、調査や実験を実施したが、具体的な成果を発表するには至っていない。よって、進捗についてはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
ダルムシュタット工科大が主催しているSVP Challengeで180次元の問題の求解に成功した実装が公開された。今後はこの公開された実装についても調査を行う。研究論文の執筆を目的に作成され、また他者によって作成されており、CPUおよびGPU実装のコードが混在し、複数言語およびフレームワークにまたがって設計・作成されているソフトウェアであるため、相当量の作業の発生が想定される。しかし、本研究の目的とする格子点列挙と格子ふるい、格子基底簡約について最も効率的な実装であり、これを利用する価値があると考えられる。よって、この実装を本研究において活用することを試みる。そして、これまでに得られた知見を活用し、この実装のさらなる改良を試みる。これに並行して、格子点列挙と格子ふるいを組み合わせた効率的な短い格子点探索アルゴリズムを構築する。また、その理論的な性質についても解析する。効率的な短い格子点探索アルゴリズムが構築でき、その性能評価が順調に進んだ場合には、これを利用した効率的な格子基底簡約アルゴリズムの設計を行う。実験にはスパコンなどの施設を利用する予定だが、スパコンは計算資源を共用するため、実験の性質に依ってはその実施が困難となる場合が考えられる。その場合は、占有可能な設備の購入あるいは利用などを検討し実施する。
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