研究課題/領域番号 |
20H04197
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
張山 昌論 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (10292260)
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研究分担者 |
Waidyasooriya Ha 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (60723533)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高性能計算 / 量子コンピューティング / 量子アニーリング / 量子化学計算 / FPGA |
研究実績の概要 |
1. 分子構造の最適化手法のためのFPGAを用いた大規模かつ高速な量子アリーリングシミュレータのアーキテクチャの改善: これまで開発してきた量子アニーリングシュミレーターでは,全結合のイジングモデルを対象としていた.このモデルで汎用性は高いが,計算量が莫大となる問題があった.今年度はこの問題を解決するために,量子ビット間の結合がスパースであるスパースイジングモデルを対象として高速化を可能とするアーキテクチャを検討した.本アーキテクチャでは,量子ビット間の相互結合を直接FPGA上のネットワークで実現することにより,超並列処理を可能とするアーキテクチャである. 2. FPGA, CPU, GPUを組み合わせた大規模な量子化学シミュレータのためのヘテロジニアスアクセラレータの構成: 昨年度に開発したCPU, GPU,FPGAを組み合わせたヘテロジアニスアクセラレータを用いて,さまざまな触媒生成に対して評価を行った.その結果CPUのみの実装と比較して最大100倍までの高速化を達成した.また,触媒生成において反応が生じやすい分子パラメータを効率よく探索するために,量子アニーリング,シミュレーテッドアニーリング,Particle Swam Optimization, Genetic Algorithm, Surrogate Optimization などの種々の組合せ最適化手法を活用したシステムを構築した.単一分子の運動パラメータを制御し基盤に反応させる簡単なシミュレーションによる評価では,ランダムサーチと比較して最大で10倍程度の高速化を達成している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 分子構造の最適化手法のためのFPGAを用いた大規模かつ高速な量子アリーリングシミュレータのアーキテクチャの確立: 昨年の成果を改良し,大幅な高速化を達成できる超並列処理を可能とするアーキテクチャを考案した この改良は当初の予定では含まれておらず,研究をより良いものにするために追加された.このような理由から,研究内容1に関しては,当初の予定以上に進展していると言える. 2. FPGA, CPU, GPUを組み合わせた大規模な量子化学シミュレータのためのヘテロジニアスアクセラレータの構成: 今年度は,昨年度開発したアクセラレータを用いて実際の触媒開発に活用することができ,その有用性を明らかにできた.また,組合せ最適化を活用したパラメータ探索を組み込んだシステムも予定通り行うことができた.このような理由から研究内容2に関しては,当初の予定通り進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
1. 分子構造の最適化手法のためのFPGAを用いた大規模かつ高速な量子アリーリングシミュレータのアーキテクチャの確立: 今年度確立した「スパースイジングモデルに基づく高速アーキテクチャ」の大規模実装を行う. 現状では,量子ビットごとに処理要素(PE)を用意しているためハードウェア量が多いという課題がある.この問題を解決するために複数の量子ビットを同一のPEに割り当てるなどの対応を検討する.また,このアーキテクチャでは,応用ごとに異なる回路を生成する必要があると想定されるため,そのような回路をイジングモデルから自動生成する,設計環境の開発も合わせて行う.
2. FPGA, CPU, GPUを組み合わせた大規模な量子化学シミュレータのためのヘテロジニアスアクセラレータの構成: 触媒の反応が起こりやすい分子の運動パラメータを効率よく探索するための組合せ最適化アルゴリズムの評価を実際の例題を通して進め,最適なアルゴリズムを決定する.さらに,ホスト数をスケールしつつも,探索結果を共有することで,さらなる探索の高速化が達成できるシステムを考案する.
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