研究課題/領域番号 |
20H04202
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
若槻 尚斗 筑波大学, システム情報系, 准教授 (40294433)
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研究分担者 |
水谷 孝一 筑波大学, システム情報系, 教授 (50241790)
亀川 徹 東京藝術大学, 音楽学部, 教授 (70359686)
善甫 啓一 筑波大学, システム情報系, 助教 (70725712)
海老原 格 筑波大学, システム情報系, 准教授 (80581602)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 斜放射平面波スピーカ / 音響放射パネル / オーディオ帯域 / 波動伝搬特性 / アルミハニカムパネル / エネルギー分布 |
研究実績の概要 |
本課題は比較的少チャネル数のサラウンド方式が検討対象であり,少ないチャネル数かつ広い受聴範囲の実現を目標としている。申請者らがこれまでに提案した大面積の平面から斜めに平面波を放射する新しいデバイス(斜放射平面波スピーカ)を用いることで,受聴範囲の拡大を図る。 令和2年度は,本システムにおいて一つのスピーカの作る音場が広い範囲で平面波的であり一定の方向性を持つことが前提条件となることから,所望の平面波放射角をもつ音響放射パネルの設計を目標とした。特にオーディオ帯域(可聴周波数範囲)における音響放射特性が重要である。申請者らによるこれまでの研究で,10 - 30 mm厚程度のアルミハニカムパネルを用いると概ねオーディオ帯域で位相速度が空気中の音速を超えて斜めに放射するようになることは判明していた。立体音響システムを構成するには,所望の放射角を広い周波数帯域に亘って自由に設計できることが望ましく,設計の自由度を確保する観点から,これまで以上にパネル中の波動伝搬特性を正しく把握することが必要と考えた。まず「ハニカムサンドイッチパネルの可聴域における波動伝搬特性」について数値シミュレーションをベースに検討を行い,周波数とパネル中の波動伝搬速度の関係に加え,新たな視点として,パネル断面中の波動エネルギー分布を計算し,ハニカムサンドイッチ構造における表面板部分とハニカムコア部分に存在する振動エネルギーの割合が周波数によって変化することなどが見出された。この成果は,国内会議(USE2020)にて発表を行った。また査読付き雑誌論文(JJAP)への投稿も行なったが,現在までのところ採録には至っていない。また,音響放射パネルの駆動方法に関して,国際会議(ICSV27申込済)において令和2年度中に検討した数値シミュレーションの内容を発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定では,令和2年度中に音響放射パネルの設計に加えて,実際に放射パネルの試作を行うことを計画していた。これは,音響計測の経験のある分担者の指導のもと大学院生が担当することを予定していたが,COVID-19の感染拡大防止の観点からリモートワーク中心にせざるを得ず,放射パネル試作のために長時間大学に滞在させることは困難と判断した。そのため,リモートで実施できる数値シミュレーションによる検討を中心に据え,音響放射パネルを実際に試作することは翌年度以降に持ち越すこととした。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画において令和2年度に実施予定であった音響放射パネルの試作を,令和3年度中に完了することを目標とする。また,令和3年度上半期はCOVID-19の影響が続くことが想定されるため,数値シミュレーションベースでの検討を中心に実施することを想定する。下半期に試作をスムーズに行えるよう,上半期において数値シミュレーションベースの設計を十分に詳細に実施することを計画する。 また,音響放射パネルの組み合わせとパネル裏面からの音の回折を防ぐためのエンクロージャ(箱)からなる,平面波スピーカモジュールの設計と試作に取り掛かり,令和3年度内に可能であれば,令和3年度下半期に単一モジュールによる放射音場の検証を行うことを目標としたい。
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