研究課題/領域番号 |
20H04211
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
備瀬 竜馬 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (00644270)
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研究分担者 |
末廣 大貴 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (20786967)
渡邉 和秀 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 上級研究員 (40749397)
吉澤 明彦 京都大学, 医学研究科, 准教授 (80378645)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バイオイメージインフォマティクス / 弱教師学習 / 半教師あり学習 / 教師なし学習 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,生命科学特有の簡易に取得可能な弱教師に鑑みて,従来検討されていなかった弱教師の問題設定の提案とその解決手法として,以下を進めた. 1)画像シーケンス中1枚の画像のみを学習データとして用いた細胞検出学習の研究開発を行った.細胞の挙動解析において,細胞はタイムラプスイメージで撮像される.このタイムラプスイメージにおいて1枚の画像のみ細胞の位置情報が付与されており,それを弱教師として学習する手法の研究開発を行った.具体的には,教師データが付与されている画像から細胞追跡を行うことで,疑似ラベルを次第に増やし,汎化性能を高めていく手法を提案した.提案手法により,大量のタイムラプスイメージのうち1枚だけにアノテーションを付与すれば,細胞検出を可能とすることができる. 2)1枚の画像に対して部分的にしかアノテーションされていない不完全な学習データからの細胞検出手法の研究開発を行った.1枚の画像における大量の細胞を網羅的にアノテーションするのはコストがかかる.そこで,PU learning 等の最先端の手法を導入し,部分的なアノテーションからのみでも学習が可能な手法を提案した. 3)撮影シーケンスにおける撮影順を活かした内視鏡画像における炎症の重症度判定手法の研究開発を行った.内視鏡検査において,内視鏡を体内で移動させながら撮像するため,撮影順が近いと炎症度も類似している傾向がある.そこで,その事前知識を学習に組み込んだ手法を提案し,精度向上を達成した. その結果,これらの研究成果が,医療画像解析分野におけるトップジャーナルMedical Image Analysis(IF:8.545)3本,トップ国際会議MICCAI4本(採択率30%),WACV1本,EMBC1本に採択された.また,国内会議において,12本の発表を行い,3つの賞を受賞した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していた研究計画においては,れぞれの課題について複数種のデータセットを用いて検証・改良を繰り返し,十分な精度を達成し,その結果,研究成果が,医療画像解析分野におけるトップジャーナルMedical Image Analysis(IF:8.545)3本,トップ国際会議MICCAI4本(採択率30%)に採択,コンピュータービジョン分野で国内最大の会議MIRU2021にて,研究奨励賞を受賞されており,申し分のない業績を挙げている. また,当初の計画で予定していなかった細胞トラッキング,病理画像セグメンテーション及び医療画像位置合わせに関する課題に関しても研究をスタートし,査読有国際会議論文として,IEEE WACV1本,IEEE EMBC1本での採択,国内会議において2件の受賞と研究が評価されている.これらのことから,「当面の計画以上に進展している」という評価に至った.
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」及び【現在までの進捗状況】に記したように,当面の計画以上に進んでおり,バイオ及び医学等の異分野の専門家と議論する中で当初想定していなかった様々な取り組むべき課題が上がってきており,研究を開始していることから,引き続き,専門家と連携して研究を推進していく予定である. また,これまでに開発した手法を実際の医療バイオ研究に活用することで,バイオ医療研究に貢献し,提案手法が広く活用できるということを示していく.具体的には,新たにバイオ研究者との共同研究を開始し,「不完全な学習データからの細胞検出手法」を改良・発展させることで,細胞でない対象(樹状突起)の検出にも適応し,実際のバイオ研究へ活用する取り組みを開始している. このように,実利用のプロセスの中で得られたフィードバックを元に,さらに実問題で活用しやすい問題設定・手法の開発というように進めていく.その中で,共通部分とドメイン特化部分に整理して進めることで,「学習データの作成コストの削減」を可能とするフレームワークを構築し,様々な課題に応用利用できる状態にする.
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