本研究では、(A)部分滑りを再現できるLuGreモデルに静止摩擦の固着時間依存性を組み込んだ新たな摩擦モデルを構築し、(B)実物の摩擦振動と滑りの計測に基づいてパラメータ同定する。その上で、(C)部分滑りの提示装置とその制御手法を確立し、(D)把持操作VR環境に組込み、(E)器用さと質感の評価を行うことを計画した。昨年度までに(A)を完了、(B)に着手、(D)を構築した。 最終年度である本年度は、(B)のパラメータ同定について、ケント紙とベークライトを含む数種の材質について摩擦振動と滑りの計測を含めて行った。一部の材質については摩擦モデルを離散化したシミュレションモデルの安定性に問題があり、妥当なパラメータを同定できなかった。また、(D)把持操作VR環境へのモデルの組み込みを行った所、モデルの離散化を工夫しないとシミュレーションの安定性を担保できないことがわかった。(C)部分滑りの提示装置については、より制作しやすくなるよう設計を修正した上で試作に着手した。 今後、Position based dynamicsなどの安定性が保証されたシミュレーションスキームを用いるため、摩擦モデルを拘束条件と拘束が働かない場合に生じるはずの変位の形に変形して、スキームに組み込むことを目指す。これにより、パラメータによらず安定な把持操作環境を実現し、摩擦モデルにより器用さが変化するかどうかを評価したい。また、材質感についも違いは感じられたので、安定性が保証されたモデルを用いてより広範囲のパラメータ同定を行い、より多くの材質について、実物との比較を行いたい。また、試作中の提示装置と組み合わせ、滑りの提示の効果を検証したい。
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