研究課題/領域番号 |
20H04222
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
伊藤 勇太 東京工業大学, 情報理工学院, 助教 (10781362)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 拡張現実感 / HMD / 視覚拡張 / AR / Beaming Displays / 波面計測 / 網膜投影 |
研究実績の概要 |
視覚の自在化を目指した本研究では、今年度光学シースルー頭部搭載型ディスプレイにおける研究において下記のような成果があった。 ■【1.波面計測による眼の焦点距離・収差の推定】網膜投影ディスプレイと波面計測センサを組み合わせた拡張現実感向け(AR)ディスプレイを試作した。これにより、視線計測等の既存のシステムから一歩進み、個人の視覚を直接計測しながら映像提示を行えるディスプレイ技術の道を示した。 ■【2.空間光変調による映像最適化と視覚との連携】光の減算によってAR映像を生む新しいARディスプレイ方式であるStainedViewを提案した。これは既存の加算方式の光学シースルーARディスプレイの欠点を補う新しい方式であり、本研究によりARディスプレイの新しい分野を開拓した。通常のARディスプレイはLCD等のマイクロディスプレイからの映像を視界に重畳する。提案したStainedViewでは空間光変調器による偏光干渉色を用いて、視界に空間的なカラーフィルターを再現することが可能になる。いわゆるステンドグラスのように、カラーフィルターによる模様を出力することで、視界に減算による映像を再生することができる。 ■別軸の研究成果として、ARディスプレイのトレードオフ(例えば、重さと性能)を解消するBeaming Displaysを提案した。これは既存のARディスプレイと異なり、空間に設置した投影方向を制御可能な小型プロジェクタにより、光学部品のみからなる電子部品を含まないメガネに映像を投影する。これにより軽い眼鏡のままで高品質なAR映像を体験できる。 こうした研究成果は、トップ国際論文誌であるIEEE TVCGに2報、VR/ARに関するトップ国際会議であるIEEE ISMAR2020のポスター論文1件として発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究提案のロードマップに照らし合わせ、計画通りに進んでいる。 COVID-19により実験を在宅で行う等の制限があったが、リモートでの実験環境等の整備により乗り切った。 初年度で目標であったディスプレイ向けの目の収差計測に関する研究はコンセプトを提案し試作することができた。 また空間光変調における映像最適化に関しては減算ディスプレイという形で新しい研究分野を開拓でき、成果をトップ国際論文誌で発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
ディスプレイ向けの目の収差計測に関する研究に関しては試作システムの検証を進め、成果を学術論文として公開することを目指す。 空間光変調(SLM)を用いた映像最適化に関しては、SLMをプログラマブルレンズとして用いたARディスプレイ技術に関する研究を継続する。 現在のCOVI-19による状況を踏まえ、実験室の機材をリモートで操作できる環境を引き続き模索していく。
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