研究課題/領域番号 |
20H04230
|
研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
天野 敏之 和歌山大学, システム工学部, 教授 (60324472)
|
研究分担者 |
岡部 孝弘 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (00396904)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 空間型拡張現実感 / ライトフィールド / 錯視 / ミラーワールド / シミュレーテッドリアリティ |
研究実績の概要 |
現実世界のすべてが一対一でデジタル化された「ミラーワールド(鏡面世界)」と現実世界を結びつける技術を空間型拡張現実感と捉え,空間型拡張現実感によるシミュレーテッドリアリティの実現を試みる.具体的には, ライトフィールドの操作によって我々の物体知覚をどこまで騙すことができるか?, 知覚メカニズムを考慮することで光学限界をどの程度超えることができるか?を核心をなす学術的な問とし,「マルチミラー型ライトフィールド投影装置を用いた高品位な見かけのBRDF操作」と「錯視の誘発による光学限界を超えるシミュレーテッドリアリティ」について取り組んでいる. 2020年度にはマルチミラー型ライトフィールド投影装置を設計・製作した.当初の計画ではPaul Devevecらが提案しているLight Stageように,操作対象を取り囲むようにLED照明を配置したドーム状の構築を計画していたが,空間分解能が不足することから,複数のプロジェクタを光源とし,アレイ状に配置した表面鏡を用いた反射によって光線場を生成する方法を採用した.また,2020年度には,装置の校正方法と光線場の生成方法を確立した.これによって,装置のステージ上の各点で入射方向毎に明度や色彩が異なる配光の光線投影ができる実験環境を構築した. 2021年度には,目標とする照明環境を再現する光線場を計算する方法を確立した.さらに,この手法により算出された光線場をライトフィールド投影装置を用いて投影することで,装置のステージ上で点光源や平行光源,拡散光源などの照明環境を仮想的に再現する手法を確立した.また,鏡面反射を仮定して各視方向に所望の色彩を提示するための光線場の生成を行うことで,アルミの外装のノートパソコンや金属の装飾品,ガラスの器などの鏡面反射を有する物体表面の配光分布を操作して,所望のBRDFの色彩に変化させる質感変換を実現した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度には光線場設計方法を確立し,ライトフィールド投影装置を用いた仮想的な照明環境の生成や光学的な見た目のBRDFの置き換えを実現するなど,前年度の遅れを取り戻す目覚ましい研究成果があった.ただし,研究の進捗と学会発表スケジュールが合わず,十分な成果発表はできていない.したがって,おおむね順調と判断する.
|
今後の研究の推進方策 |
令和4年度は研究成果の発表に注力する.世界的な感染症の影響によって学会の開催日が変則的になっている.このために成果発表の機会を逸していた.その一方で,多くの会議がオンラインで開催されており,移動の必要がないため参加しやすい状況にある.この状況に柔軟に対応し,令和3年度までに得られた成果を発表したい.研究の内容に関しては,構築した装置や確立した手法を応用して,錯視の誘発方法の検討を行う.また,より広い角度範囲からの光線投影できるように装置や手法の改善にも取り組む予定である.
|