研究課題/領域番号 |
20H04233
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
柳田 康幸 名城大学, 理工学部, 教授 (70230266)
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研究分担者 |
野間 春生 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (00374108)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | バーチャルリアリティ / 嗅覚提示 / 空気砲 / 渦輪 |
研究実績の概要 |
香り提示のための空気砲の自由度を飛躍的に高める手法として提案されたクラスタ型デジタル空気砲 (Cluster Digital Air cannon: CDA)に期待されるさまざまな機能について,流体シミュレーションと実機の両面から検証した. まず,CDAを用いて渦輪に香りを乗せる手法について検討し,実装した.従来形空気砲の開口部エッジ付近に香りを充填すると香気が効率的に渦輪へ巻き込まれるという先行研究の知見に基づき,インクジェットデバイスで霧化した香料をCDA外周部付近に滴下することで,香りを含む渦輪を生成できることを確認した.従来の箱形空気砲による香り提示では空気砲内部に香気を充填する必要があったのに対し,新方式はCDA前面の空間に香気を充填し,直後に渦輪として射出するため,原理的に空気砲内部の香料残留が一切発生しない.この特徴は,渦輪ごとに異なる香りを届ける場合に香りが混ざる問題や,繰り返し香り提示を行う場合に香りが装置に付着する問題に対する解決策として期待できる. 次に,短時間での連射が可能である特徴を活かし,CDAの連射を行ったところ,後発の渦輪が先発の渦輪を後押しする加速効果が見いだされた.渦輪の速度が向上すると,渦輪の生存時間内により遠くまで渦輪が届くので,渦輪直径を拡大せずに飛距離を伸ばす効果が期待できる. また,ユーザーの呼吸フェーズに同期して渦輪を射出するシステムを構築した.本研究における香り提示手法は,渦輪到達直後の短時間のみ香りを知覚可能であるため,渦輪到達時に息を吐いていると香りを感じられない.そこで,非接触でユーザーの腹部の動きを計測することで呼吸フェーズを検知し,渦輪射出のトリガーとするシステムを構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウイルス感染拡大に伴い,昨年度に続き繰り返し入構制限が断続的に発生したが,経験が蓄積されてきたため,制約がある中でも予定した実験や解析を順次進めた.香り提示のための基本的な機能の検証を行うとともに,研究開始当初は想定していなかった連射による加速効果を見いだすなど,一部では予定以上の進捗も見られる.一方,当初想定していたCDAに関するさまざまな機能のうち,いくつかは期待通りの結果が得られていない.たとえば,ノズルの射出タイミングをずらすことにより,渦輪の飛行方向を制御できないか期待したが,少なくともノズル駆動の時間差を極めて小さくする必要があることがわかり,現状の装置で実現できる見通しは立っていない.
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究構想ではCDAに多様な機能を期待し,順次検証を行ってきたが,全てを検証しようとすると活動が発散するため,香り提示という目的にとって重要な機能に絞り込み重点的に検証を行う必要がある.また,原理検証のため汎用性を重視し48チャンネルという大規模なバルブシステムを用いているが,実用化を図るにはシンプルなシステムであることが望ましい.そこで,用途に応じて必要な機能を絞り込み,扱いやすいシステムを構築することが望まれる.
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