クラスタ型デジタル空気砲 (Cluster Digital Air Cannon: CDA) を用いた香り搬送のための渦輪射出挙動について,これまでの研究により明らかとなった課題を整理し,実験を行うことにより解明を行った. CDAによる渦輪の生成が不安定だったり渦輪速度が遅い現象が観察されていたが,この問題については電磁弁通過後のチューブ内流路抵抗の影響に着目し,これを排除するために電磁弁の射出口を直接CDAの空気射出孔とするチューブレスCDAを構成した.7個の電磁弁を並べた構成により,渦輪生成率は100%となり,加えて圧縮空気の圧力により渦輪速度を制御可能であることが示された. 一方,チューブレスCDAは電磁弁本体のサイズのため,これまでに試してきたCDA(直径10cm程度の領域の中に数十~100個程度の射出孔を配置)と比べて射出孔の数と密度を確保することが困難である.そこで,これまで実験を行ってきたCDA(チューブ長80cm程度)とチューブレスCDAとの間の挙動を調べるべく,チューブ長を短縮した際の挙動を調査した.その結果,外径6mm,内径4mmのチューブを使用した場合,チューブ長が20cm以下で渦輪生成の安定度が向上する傾向が観察された. また,香りの局所的提示を行うにあたり,渦輪の射出方向制御も重要な機能である.従来,CDAから射出される渦輪の方向は固定されており,渦輪の方向制御を行うにはCDAの射出ヘッド全体を回転させる必要があった.射出ヘッド自体は単なる板のため回転させることは容易であるが,背面には多数のチューブが接続されており,チューブ群全体を振り回す必要があり,課題となっていた.これに対し,射出ヘッドを柔軟素材で構成し,ヘッドの変形により射出される空気の方向を変え渦輪の射出方向を制御する方法を発案し,実験により方向制御が可能であることを確認した.
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