【柔軟指の計測とモデリング】の研究項目においては,1.空気中での凹凸面なぞり時における指腹部に生じる変位の計測精度向上のために,黒色スプレーを用いて汗腺孔のみを着色し,これをテンプレート画像とした追跡への変更,2.計測中(なぞり中)における指のぶれを軽減するために,3Dプリンターにより作成した治具を用いて,示指の爪部分からMIP関節部分までを可能な限り固定する設計へと変更(指と治具の固定にはネイルチップとネイルチップ用両面テープ,マジックテープを使用),3.指先の押下力および凹凸透明体の凹部の幅を変更した際の凹凸面なぞり時の指腹部挙動の計測の実施,4.,凹凸面なぞり時の指腹部表面のめり込みも含む挙動の計測システムへの変更を行った.その結果,本システムでは,様々な押下力における,Slip時の減衰振動の挙動をも捉えることができ,凹部の幅が広いほど指腹部表面の「なぞり方向の振動」および「凹部へのめり込み量」が大きいことがわかった. 【仮想柔軟指の実時間変形・接触シミュレーション】の研究項目においては,指シミュレーションモデルを段階的に精緻化する方法を考案した.まず,ステージ1はヤング率・ポアソン比のみを評価するための,接触面の静的押し込み時の計測である.ヒトが触察をする際の押付力は約30~60 gであり,その範囲でのヤング率・ポアソン比の最適値を求める.ステージ2は,粘性係数を評価するための減衰振動の計測である.Stick-Slip現象による接線方向の振動が発生した際の歪み速度の範囲内での,減衰振動のパラメータを求める.ステージ3は摩擦係数の評価のための計測である.ヒトが触察をする際の押付力の範囲内での最適な摩擦モデルや摩擦係数を求める.ステージ4は,モデルおよびパラメータの総合的な評価である.このうち,本年度は,ステージ1と2の実験を行った.
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