令和5年度では,価格設定の妥当性の説明について実施した.具体的な内容は以下の通りである. (i)因果を考慮した予測値への寄与度の説明手法の提案:妥当な説明として,人種などの保護属性が価格設定に寄与していないことが挙げられる.しかし現実問題では,単純に保護属性の値が寄与しない価格設定をしても不公平になる場合がある.この場合,因果を考慮し,因果グラフ上のパスに依存して公平か不公平かが異なるようにする必要がある.つまり,保護属性を変化させた時の不公平なパスによる価格設定への寄与度を計算し,この影響がないことを説明すれば良い.これを達成するために,協力ゲームの技術であるdividendを利用したアプローチを提案した.重要なアイデアとしては,協力ゲームの枠組みに落とすために予測モデルを集合関数に落とす必要があるが、一般的に集合関数は因果を表現できない.そこでアンチマトロイドとして一般化される離散構造を利用して集合関数上で因果を表現した.これを元にして,因果グラフのサイズの線形時間で寄与度が計算できるアルゴリズムを提案した. (ii)MC-netに基づく説明手法の開発:機械学習における説明可能AIにおいて,シャプレイ値に基づいた説明は公理に基づいた説明であるが,一部の公理は説明として成り立たない.例えば,ナルプレイヤーの公理を利用して,シャプレイ値が0であるなら予測値への貢献度が0であるという説明をしているが,これは一般的に成立しない.つまり,シャプレイ値を説明として使うとことの妥当性に欠けている可能性がある.この問題を解決する方法として協力ゲームのMC-netに基づいた説明手法を開発した.この説明手法はシャプレイ値とは異なり,説明と予測値への貢献度の関係性が明確であることを示した.
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