研究課題
神経細胞の分散培養系 (in vitro) とラットの聴覚野 (in vivo) といった脳組織を実験対象とし,これらの脳組織を計算資源として定量化する手法を検討した.具体的には,脳組織を物理リザバーと見なし,その情報処理の特性を情報処理容量(IPC)の定量化を試みた.IPCでは,特定の入力に対するリザバーの内部状態から,力学系の情報処理能力を調べる.具体的には,入力時系列を直行多項式分解する基底を状態量から推定し,その精度を定量化する.そのため,入力に対して決定論的な任意のベンチマークタスクの性能を評価できるはずである.したがって,脳をリザバーとみなし,そのIPCを算出できれば,任意のベンチマークタスクの性能を評価できるはずである.IPCの算出では,入力時系列を直行多項式分解する基底を状態量から推定し,その精度を定量化した.本研究では,直交多項式として任意多項式カオスを採用し,グラム・シュミットの直交化を用いて,任意の確率分布に従う時系列からノンパラメトリックに直交多項式空間を構成した.その結果,脳組織の1次・2次のIPCを定量化でき,脳組織が線形・非線形の情報処理能力を有していることを示した.また,このIPCは,シフトレジスタタスク,論理演算タスクといった既存のベンチマークタスクの成績と有意な相関を示した.これらの結果から,脳組織を計算資源として使えること,また,提案手法が脳組織の計算能力を網羅的に評価できる可能性があることを示した.
2: おおむね順調に進展している
本研究は,脳組織でフィジカル・リザバー計算を実現し,計算資源としての脳の特徴を考察するために,①神経細胞の分散培養系 (in vitro) とラットの聴覚野 (in vivo) を実験対象とし,これらの脳組織を計算資源として定量化する手法を確立すること,②脳の計算能力が,自己組織的な神経回路の形成やその後の経験依存的な可塑性により,どのように変化するかを調べることを目的としている.これまでに,目的①を達成できたことから,順調に研究を進められていると考える.
本研究は,脳組織でフィジカル・リザバー計算を実現し,計算資源としての脳の特徴を考察するために,①神経細胞の分散培養系 (in vitro) とラットの聴覚野 (in vivo) を実験対象とし,これらの脳組織を計算資源として定量化する手法を確立すること,②脳の計算能力が,自己組織的な神経回路の形成やその後の経験依存的な可塑性により,どのように変化するかを調べることを目的としている.これまでに,目的①を達成できたことから,今後は目的②を達成するための研究に取り組む.
すべて 2021 2020 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (12件) (うち招待講演 3件) 備考 (2件)
IEEJ Transactions on Electronics, Information and Systems
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10.1541/ieejeiss.141.661
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http://www.ne.t.u-tokyo.ac.jp/
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