研究課題
昨年度までに,脳組織を計算資源として定量化するために,情報処理容量という指標を確立してきた.本年度は,神経細胞の分散培養系とラットの聴覚野において,物理リザバー計算のメタ学習の可能性と機能的意義を検証した.まず,入力刺激列のダイナミクスと脳のダイナミクスとの関係を調べた.さまざまな平均刺激間隔で情報処理容量を求めたところ,情報処理容量は刺激間隔に依存し,神経細胞の分散培養系では30 ms付近で,ラットの聴覚野では10-20 ms付近で最大となった.この結果から,脳組織固有のダイナミクスが,情報処理容量に多大な影響を与えることがわかった.ラットの聴覚野では,脳組織固有のダイナミクスと音楽との関係を調べた.行動実験では,ラットが音楽に合わせてビード同期することを発見した.音楽のダイナミクスを調べたところ,音楽の音符間隔の平均は約200 msであり,この音間隔は,ラットの聴覚野の順応特性で説明できることがわかった.神経細胞の分散培養系の生理実験とスパイキング・ニューラルネットワークの計算機シミュレーションでは,自己組織化臨界現象が,計算能力を向上させる可能性を検証した.その結果,適切な刺激間隔で刺激を入力すると,臨界状態では,未臨界状態・超臨界状態よりも,神経回路の情報処理容量が高かった.これらの結果から,脳組織は臨界状態にあるときに高い情報処理容量を持つことや,発達に伴って自己組織的に情報処理容量を高めていくことが示唆された.このような自己組織化臨界現象が,物理リザバーとしての脳組織の情報処理能力を支えていると考える.
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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