研究課題
今年度において、光共振器内部の光線軌道がカオスとなることが知られているスタジアム型やシナイのビリヤード型の微小共振器、そして光線軌道が規則的となる長方形型の微小共振器などの様々な光微小共振器を作製して、それらをリザバーとして利用して、カオス時系列予測、非線形変換、記憶能力等さまざまなタスクに対して、その性能を評価した。その結果、スタジアム型の微小共振器がほとんどのタスクで良い性能を示すことがわかった。これをSN比の評価や特異値分解に基づくリザバーの次元推定などを用いて解析して、スタジアム型の光損失の低さ(Q値の高さ)および、その波動の混合効果が、記憶性能やリザバーの高次元性に寄与して高い性能を発揮することを明らかにした。この結果は、大容量のリザバー計算を可能にする光回路を設計するための重要な指針となると考えている。次にスタジアム型の光リザバー計算回路のセンシング応用について検討し、入力光の位相を放射パターンに変換し、その放射パターンから位相を推定できることを明らかにした。また、昨年度に開発した高速光ランダムパターン投影技術を組み合わせて、1ナノ秒以下の時間でMNIST手書き文字イメージの分類ができることも明らかにした。この結果は高速なイメージ認識に展開できる重要な技術であると考えている。また、最適制御に基づく物理深層学習をさらに発展させ、システムパラメーターも含めて最適化するための手法を開発した。さらに誤差逆伝播を用いずに、制御信号をランダム信号として直接フィードバックして学習を効率化させる手法も開発して、Adjoint法に迫る分類性能が達成できることを示した。以上のように、光の波動カオスに基づくリザバー計算回路の設計・評価、そして、それらを発展させるための理論的枠組みの構築についての成果を得た。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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