研究課題/領域番号 |
20H04263
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
岡本 正吾 東京都立大学, システムデザイン研究科, 准教授 (10579064)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 触感 / 触感ディスプレイ / 摩擦 / 粗さ / 振動 / 静電気 |
研究実績の概要 |
これまでに開発した触感ディスプレイで,グレーティング・スケールよりも複雑なテクスチャを提示可能にするため,触感提示アルゴリズムを改良した.指がテクスチャ表面に触れるときに生じる現象をコンタクトメカニクスおよびトライボロジー分野の知見によってモデル化した.このモデルによって,指の運動(触察運動)と摩擦刺激が物理的に矛盾しないようなモデルを構築した.具体的には,指の加重および速度に応じて,指と仮想素材の間の摩擦係数が変化するような物理モデルを使用した.モデル構築のためのデータ計測には,従来からわれわれが用いてきた接触力計測装置を活用した.このような物理モデルを用いても,微細なテクスチャによって発生する指とテクスチャ界面の現象をモデル化することは困難である.そこで,不足分を統計モデルによって補った.この統計モデルは,触刺激の周波数特性をモデル化することを狙っており,先の物理モデルと併用することで,テクスチャの提示能力を向上させようというものである. 以上のモデルによって,皮・綿・木材・デニムの4素材をモデル化し,参加者実験によって仮想素材がどの程度同定されるかを調査した.実験の結果,7割から8割程度の正解率となった.これは,摩擦の物理モデルのみを用いた場合の4割から7割程度の正解率を優に上回った.以上の結果は,IEEE Trans. on Haptics に採択・出版された.同誌は,ハプティクス分野の最有力雑誌である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2次元触感ディスプレイの開発から,その有効性の実証までを過去3年間で順調に成し遂げてきた.1-2年目は,ディスプレイの開発および,それを用いてグレーティング・スケール(規則的な粗さ試料)を提示すると,従来の1次元触感ディスプレイよりも優れた,リアリズムが得られることを実証した.2022年度(3年目)は,2次元のうち,静電摩擦刺激のみを用いたより高度なアルゴリズムによって,複雑な素材を提示する方法を開発することができた.以上の進捗は概ね計画とおりである.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,2次元触感ディスプレイを用いて複雑な素材(デニム,木材など)を提示する方法を開発し,その効果検証を行うことに取り組む.これは,当初の計画を超えた課題である.当初の計画は,2次元触感ディスプレイの開発と実験による有用性の実証であり,これらは既に成し遂げている.2次元触感ディスプレイを用いた,素材の触感提示には,統計モデルもしくはデータ駆動型モデルを採用する.ヒトの指が素材を擦るときに発生する接触力の法線成分と接線成分とその両者の関係を統計モデルで表現し,触感ディスプレイによって提示する.手法の開発と実装が成功すれば,参加者実験によって効果検証をすすめる.
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