本研究では,健常な手を持つ者に自身と異なる身体性を疑似体験させることで,そうした身体性を持つ人に特徴的な把持戦略に関するデータ収集が可能か検討し,機能制約を伴う手による把持推定の枠組みを構築した.VR疑似体験システム上で,可動域の制限された手モデルを操作し,想定された可動域の逸脱時に通知を受けることで,物理的制約時と同様の把持姿勢が概ね観察可能であり,可動域が制約された手に可能な姿勢の理解が進むことが示された.筋力低下や摩擦など高齢化に伴う手制約を考慮した姿勢を生成する手法も合わせて構築し,疑似体験によるデータ収集が進むことで,種々の身体を考慮した把持姿勢推定が可能になる可能性が示された.
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