研究課題
不完全な自動運転は,運転者の乗り物酔いのリスクを高める可能性があるため,交通事故を誘発する恐れがある.そこで本研究では,不完全な自動運転中の運転者の乗り物酔いの発症条件の解明とそれに伴う交通事故との因果関係を明らかにするとともに,乗り物酔いを低減する自動車に具備すべき新しい手段を開発することを目的とした.本年度では,実際に自動運転車を用いた走行実験を行い,走行中の被験者の乗り物酔いの症状を,新しいシステムとしてビデオカメラを用いた映像脈波によって定量化するための基礎的な検討を行った.身体を撮影して得られる映像脈波を用いれば,ドライブレコーダやスマホだけで乗り物酔いの状態を把握できるようになる可能性がある.実験では,レベル4の自動運転車を使用し,被験者の顔の動画,心電図,耳朶脈波,血圧等を計測した.その結果,走行前に比較し,走行後において映像脈波のMayer波の周波数成分とLF/HFが減少する場合があった.これまでの研究では,乗り物酔いにより交感神経系活動の亢進と副交感神経系活動の減弱が生じ,心拍数変動が増加するとされている.この結果はこれに反するものであるが,心拍数の増加は見られず,脈波振幅の増加と副交感神経系活動に関係するCVRRの減少が共通した.心拍数が不変にもかかわらず脈波振幅が増加したということは,血管コンプライアンスの減少,あるいは末梢血管抵抗の増加を意味する.これは乗り物酔いの症状が血管特性の変化に影響を与えた結果であることを示唆している.ただし実験結果は互いにばらつきが大きく,一定の傾向の存在が明確ではなかった.これは,乗り物酔いの症状が強く出ている走行中のデータの解析ではなく走行後の解析であることが原因である可能性がある.しかし,走行中は車体の振動と周囲光の大幅な変化が雑音となるため,映像脈波の精度の高い計測は困難であることが改めて明らかとなった.
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)
Electronics
巻: 13 ページ: 1126-1138
10.3390/electronics13061126
IEEE Journal of Translational Engineering in Health and Medicine
巻: 12 ページ: 76-83
10.1109/JTEHM.2023.3318643