研究課題/領域番号 |
20H04272
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
小坂 浩隆 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (70401966)
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研究分担者 |
岡沢 秀彦 福井大学, 高エネルギー医学研究センター, 教授 (50360813)
丁 ミンヨン 福井大学, 学術研究院医学系部門, 特命講師 (10774466)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / 脳科学 / 疼痛 / 社会性 / 共感 |
研究実績の概要 |
自閉スペクトラム症(autism spectrum disorders, ASD)の主症状としての(A)社会的コミュニケーションの障害、(B)限定した興味と反復行動や感覚刺激に対する過敏さ・鈍感さ、に注目し、その関連性を脳科学研究、心理行動学的研究を行っている。 我々の先行研究結果からASDの社会性の発達に関与していると考えられるヒトの身体やその部位に反応する外側後頭側頭葉皮質LOTCについて、定型発達群を対象にrepresentational similarity analysisを用いて解析した。児童思春期群も成人群も、両側LOTCに身体部位に関する領域の賦活を認めたため、ヒト全身像への反応は異なるものの、ヒト身体部位へのLOTC反応の類似性が確認できた。さらに、感覚回避などの感覚スコアとLOTC類似性に相関が認められ、ASDの脳賦活の個人差を理解する上でもLOTCが重要であると示唆された。 ASDの社会的(語用論的)コミュニケーションの障害は、社会的相互作用の困難さに加え、社交不安や言語流暢性の低下などが関係していることが児童期には報告されている。今回、成人群でもコミュニケーション行動に影響を及ぼす要因を検討した。その結果、構造方程式モデリングを用いて、社会的相互作用がコミュニケーション行動に直接的に影響するだけでなく、社交不安や言語流暢性を媒介して間接的に影響するモデルが認められた。定型発達群ではコミュニケーション行動のパターンが異なっていた。 ASD群の疼痛認知・共感の神経病態を、行動・脳機能・神経内分泌の特性から明らかにする研究を進めている。被験者の疼痛に対する行動特性を数値化し、感覚に対する個人差を同定し、functional MRIによる疼痛・共感に関する脳賦活領域を同定し、疼痛・社会性に関与する遺伝子多型を確認し、それらの関連性を探求している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
社会性に関与するヒト身体部位への脳賦活の類似性研究、ASD群のコミュニケーション行動と社交不安に関する研究においては、論文発表を行った。さらに、疼痛感覚に対する研究では、当初の計画通り、ASD群の疼痛認知・共感の神経病態を、行動・脳機能・神経内分泌の特性から明らかにする研究が進められた。しかしながら、コロナ禍の影響で、被験者の安全性を優先し、研究機関での検査は一時中断している。検査が終了した被験者に疼痛に対する解析、functional MRIによる疼痛・共感に関する脳賦活領域の探索、疼痛・社会性に関与する遺伝子多型の解析を進めた。被験者リクルートで中断されている状態であるが、解析は進められている。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の情勢を確認しつつ、被験者リクルートを再開する。ASDの疼痛に対する行動特性、脳機能特性、神経内分泌特性(疼痛・社会性に関与する遺伝子多型)を確認していくが、コロナ禍が持続するときは、途中経過のデータにおいて追加解析を検討する。
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