研究課題
脳波などを利用して、脳活動から認知状態を推定したり、調整しようというブレインマシンインターフェース研究が多く行われている。しかしながら、我々の身の回りに浸透しているとは言いがたく、もっと簡便な認知状態へのアクセス方法が求められている。申請者は、瞳孔計測により、「ひらめき」や「まぶしさ」などの認知状態を推定できることを明らかにしてきた。本研究では、瞳孔径を中心とした眼球運動計測データから認知状態を推定する。具体的には、主観的時間知覚、情報が欠落したあいまいな視覚情報に対する処理能力・理解度などの認知状態推定を行う。本年度は、明るさ錯視を利用して、瞳孔径を操作することにより、それらの認知状態を変調することを試みた。時間知覚と時間継続を正確に把握する能力は、基本的にすべての行動の中心的な要素である。実験心理学の初期段階から、刺激の大きさは知覚される持続時間と正の相関があると考えられており、これまでのほとんどの研究では、物理量の強さが比較的異なる刺激を提示することでその効果を評価してきた。しかし、知覚の大きさそのものが時間知覚にどのように直接影響するかは、依然として不明である。そこでグレア錯視(物理的な輝度を変えずに知覚される明るさを増強する視覚的錯視)を適応した2区間の継続時間識別課題を行い、時間知覚が知覚の大きさにも影響を受けるかどうかを検討した。その結果、時間知覚はグレア刺激の錯視的な明るさに影響されることがわかった。興味深いことに、物理的に等輝度であるにもかかわらず、一見明るい刺激(グレア刺激;大きな瞳孔反射)の知覚時間は対照刺激(ハロ刺激;小さな瞳孔反射)のそれよりも短く、よく知られた "マグニチュード効果 "とは対照的であった。
2: おおむね順調に進展している
計画通り、明るさ錯視を利用した時間知覚に関する瞳孔計測を行い、概ね順調に研究が進展していると判断する。
申請書の研究計画にそって、引き続き、瞳孔径から主観的認知状態を推定・調整する実験を行う。本研究で得られた知見を投稿論にまとめる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件)
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