今後の研究の推進方策 |
(1) 生体電気信号に基づく位置・姿勢の推定法開発: 魚の遊泳位置を推定するため,魚をその体軸上に配置された複数の電圧源とみなし,平面分布定数回路に基づき水槽中の水を介した生体電気信号の伝達特性を示す平面分布定数回路モデルで表現する.そして,座標の集合(x,y)に位置する電極で計測された信号Sx,y(t)を信号源と仮定し,これを境界条件sx’,y’’= Sx,y(t) (x’=x, y’=y)として解き,各電極座標(x’,y’)での予測信号と実測信号の二乗誤差を求める.魚の位置はこの二乗誤差を最小にする電圧源の座標の集合(x,y)として推定する.予備実験より遊泳姿勢の変化は生体電気信号の位相の空間分布に影響することが示唆された.そこで,魚の遊泳姿勢を120 fps以上の高速カメラで撮影した後,画像解析ソフトMove-tr/2D(Library社製)により体軸を抽出し,姿勢を体軸位置bに沿った曲率ベクトルk(t)=Δθ(t)/Δbで表現する.そして,遊泳姿勢の撮影と同時に生体電気信号を計測し,推定位置における空間分布電圧源Sx,y(t)の位相分布Φx,y(t)と遊泳姿勢kの関係をガウス過程回帰することで姿勢推定を行う. (2) 情動誘発物質を用いた実生物実験:本年度に引き続いて実生物実験を行い,情動と生体電気信号を対応付けるためのデータベースを作成する.計測した生理状態と運動状態から心理状態を表現する空間軸を見出すため, Russelの感情円環モデルに基づき,快・不快,および,活性・非活性状態を誘起する刺激を魚に与え,吉田准教授(研究分担者)が有するゼブラフィッシュ実験ノウハウを利用して生体電気信号と行動を計測する.研究期間を通し,各情動について30個体以上の計測を行い,化学物質,情動状態,生体電気信号,および行動を収集したデータベースを構築する.
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