研究課題/領域番号 |
20H04277
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
吉田 昭太郎 中央大学, 理工学部, 助教 (20785349)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 神経回路 / 培養神経細胞 / マイクロマシン工学 / マイクロパターニング / バイオAI |
研究実績の概要 |
本年度は、前年度までに立ち上げた単一神経細胞プレートの製造設備及び神経細胞の培養・神経回路の構築のための設備を利用して、ポリLリジンを用いたマイクロパターンとゼラチンメタクリレートによるパターンの検討を進め、最適な材料の組成とマイクロプレートの寸法について詳細に検討を行った。製作にはソフトリソグラフィ法を用い、ポリジメチルシロキサンの鋳型を形成した後に、ポリLリジンのマイクロコンタクトプリントおよびゼラチンメタクリレートの鋳型形成法によるマイクロプレートの製作を行った。特にゼラチンメタクリレートを用いたマイクロプレートの製造方法について、これまでは微小なプレートを細胞非接着領域/細胞接着領域の分子パターンを付加しながらアレイ状に並べる技術が存在しなかったところ、それを実現する新たな製造プロセスの開発に成功した。具体的には、細胞非接着性ポリマーの薄膜を形成した後に、ゼラチンメタクリレートをフォトリソグラフィによって加工して未加工部を除去する工程において、形成物同士が床面の薄膜で接合してしまう問題を回避しつつかつ形成物が破壊されない最適なゼラチンメタクリレート濃度および洗浄方法を確立した。これに対して神経系細胞を播種し、細胞非接着領域と接着領域のパターンに狙い通り細胞をパターン化して培養できることがわかった。マイクロマニピュレータによってこのマイクロプレートを微小操作できることも確かめた。 さらにカーボンナノチューブや導電性高分子を用いたマイクロ電極システムの開発にも着手し、さまざまな材料と加工法の検討を行った。特に神経細胞の分泌物であるグルタミン酸を定量的に計測可能なマイクロセンサーの開発を行い、濃度依存的な反応の計測に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゼラチンメタクリレートを用いた新たなマイクロプレートデバイスの製造方法の開発に成功し、かつ有機物材料を用いた神経細胞の活動電位及び分泌物の定量計測用マイクロセンサの開発も進んでおり、計画は一部では当初の想定以上に順調に進んでいる。一方で、未だに続くコロナ禍における様々な人的・資源的制約により、ヒトiPS細胞由来神経細胞をマイクロプレート上で培養する検討が遅れている状況である。これはヒトiPS細胞由来神経細胞が高価であることから本実施課題の予算内で培養-デバイス開発の繰り返し試行回数に制限があり、なるべくデバイスの条件検討を先に詰めきった後に細胞培養実験の検討を行った方が経済的であると考えていることに由来する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発したゼラチンメタクリレートを用いた新たなマイクロプレート製造技術を用いてデバイスを製作し、ヒトiPS細胞由来神経細胞の培養実験によって神経細胞の形態制御と回路形成に対する最適なデバイス構造の検討を行う予定である。あくまでも高価なヒトiPS細胞由来神経細胞の培養実験は予算の都合上可能な限り回数を低く留める必要があるため、初めの3ヶ月程度はデバイスの条件検討をまずは詰め切ることを優先する。その後、培養実験を可能か限り繰り返し、目的のデバイスの開発を完了させることを目指す。その際に、市販の比較的安価なヒト由来神経細胞を始めに用いてデバイスの構造検討を行うことで、なるべく後のヒトiPS細胞由来神経細胞を微小操作することによる人工的な回路構築のための条件検討の回数を増やす工夫を行う。
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