本研究では、ベイズモデリング技術を技術面の柱として、一細胞レベルでの多次元データを適切に処理・解析・統合し、多細胞が織りなす相互作用ネットワークのダイナミクスを可視化・数式化する情報解析技術を開発する。2022年度は以下のような進展があった。 (1)細胞動態シミュレーションのための深層生成モデルの開発:深層生成モデルと数理モデルの融合により、シングルセルトランスクリプトームデータから細胞状態遷移のゆらぎをシミュレートし、確率的な遺伝子発現変化や細胞運命分岐点を探索するための深層生成モデル VICDYF(variational inference of cell state dynamics with fluctuation)を開発した。 (2)細胞間相互作用ネットワークを推定する深層生成モデルの開発:一細胞解像度で細胞間の共局在ネットワークを推定するとともに、共局在関係によって定義される細胞集団の分類、関連するリガンドとレセプター間の分子パスウェイを同定するための深層生成モデル deepCOLORを開発した。 (3)多細胞が作り出す組織構造変化を抽出するベイズ機械学習の開発:組織透明化手法 CUBIC を用いて、マウスのさまざまな臓器を透明化し、血管・リンパ管を臓器のまま3次元かつ高解像度に可視化した画像データから、位相的データ解析や非定常ポアソン過程モデルなどの機械学習技術により、3次元の脈管構造の『かたち』を総合的に評価するための方法を開発した。 (4)多分子が作り出すタンパク構造変化を抽出するベイズ機械学習の開発:分子動力学シミュレーション、パーシステントホモロジー法、およびベイズ統計モデルを用いて、アミノ酸変異によって引き起こされるタンパク質構造変化の多様性を解析するための方法を開発した。
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