研究課題/領域番号 |
20H04290
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
北島 宗雄 長岡技術科学大学, 工学研究科, 特任教授 (00344440)
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研究分担者 |
李 昇姫 筑波大学, 芸術系, 准教授 (80259051)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 適応的問題解決 / 行動記録 / 振り返り学習 / 記憶強化 |
研究実績の概要 |
本研究では,適応的問題解決能力を備えていることが,これからさらに進展すると思われる知識基盤社会において豊かな生活を送る上で必須であると考え,それが日々の活動の中で自然に涵養される環境の構築を目指す.具体的には,人々の日々の問題解決行動を記録し,適応的問題解決が行われたタスクを抽出し,行動選択・記憶に関する認知行動科学理論に基づいてタスク遂行時の認知プロセスを視覚化し,それを振り返ることによって記憶定着させることを狙う.この「行動計測・問題解決行動抽出・認知プロセス視覚化による記憶強化」を,個々の生活動線にスムーズに統合して日々の実践として繰り返して行える環境を構築する. 今年度は,「学術的-問 3」として設定した課題「行動記録から問題解決モードをどのように特定できるのだろうか」に取り組んだ. 日常行動時の行動イベントを記録し収集データからイベントの特徴づけを行うことが必要だが,その方法を確立するための予備実験を実施した(8月)。行動イベント記録デバイス(My Daily Badge(MDB))と全方位カメラを,実験協力者に装着してもらい,散歩行動(15分程度)を記録した.MDBは,心拍数,方位,加速度,GSRを記録される.実験参加者は散歩の頻度の高(2名)/低(3名)の5名であった。散歩コースとして,慣れ親しんだルート(RF)と,新規のルート(RU)を設定した.散歩後のインタビューにより聞き出した,散歩中に興味を引かれたシーン,気づき,日々の散歩の意味と,散歩時に収集したデータを総合的に分析し,実験参加者の散歩行動の類型化を行った.その結果,郷愁,安全,景観,社会性の4類型が見出された。この結果を踏まえ,20名の実験協力者による本実験を実施した(1月).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,まず,行動イベント記録デバイスの仕様と製作方法を決定することに注力した。行動イベント記録デバイスにより行動時の生体データ(心拍,発汗,加速度,方位など)を記録する。データ収集の目的は,振り返ることにより適応的問題解の能力向上に効果のあるイベントをデータ分析により抽出することである。この普遍的に重要な能力の育成は世界的に望まれていることなので,行動イベント記録デバイスのデザインや装着方法を地域の特性(文化,風習など)を考慮して製作することが必要である。そこで,製作方法として“Off-the-Shelf Adaptive Design (OSAD)”を考案した。これは,行動イベントを記録する現場で容易に調達できる機材をアセンブルして,装着方法を考慮した筐体デザインを3次元プリンタにより成形する,という方法である。この方法により,日常的な散歩行動時のイベントを抽出するための実験を実施し,イベント抽出に使えるデータが収集できることを確認した。 また,イベントの種類に応じて,将来の散歩をより価値を生み出すものにするための,収集された散歩経験の振り返りの仕方を検討するために,散歩行動の類型化を行った。郷愁を求めた散歩の場合には,過去のイベントを意識化することにより,将来の散歩をよりよいものにできるという示唆が得られたので,次年度に向けて,着実に研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度考案したOff-the-Shelf Adaptive Design (OSAD)の考え方に基づいて,スマートフォンベースの行動記録アプリの構築に向けて研究を進める。アプリ構築によりデータ収集が効率よく行えるようになり当初目標は問題なく達成できる。研究計画を推進する上での問題はない。
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