研究課題/領域番号 |
20H04294
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
柏原 昭博 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (10243263)
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研究分担者 |
長谷川 忍 北陸先端科学技術大学院大学, 情報社会基盤研究センター, 准教授 (30345665)
鷹岡 亮 山口大学, 教育学部, 教授 (10293135)
太田 光一 北陸先端科学技術大学院大学, 情報社会基盤研究センター, 助教 (00770124)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 学習支援システム / 学習支援ロボット / エンゲージメント / モデルデザイン / 振る舞い制御 |
研究実績の概要 |
本年度は、学習者のエンゲージメントを引き出すための基盤となるエンゲージメント促進モデルを洗練し、昨年度開発を進めた学習支援ロボットシステムを洗練した。具体的には、以下に示す(1)から(3)を実施した。 (1)エンゲージメント促進モデルの洗練:実施が遅れていた学習支援ロボット(講義ロボットおよび英文読み合いロボット)を用いた予備実験の結果に基づき、エンゲージメント要因とロボットの擬人化傾向・身体性に関わる要素との対応関係を見直し、エンゲージメントを引き出すためのロボットの振る舞いを再整理した。同時に、エンゲージメント促進に寄与するものとしてロボットが認知的な弱さをみせて学習者の向社会性を引き出すコミュニケーション方法等を検討し、エンゲージメント促進モデルを拡張した。 (2)学習支援ロボットシステムの洗練・応用:予備実験の結果得られた技術的問題点を踏まえて、洗練されたモデルに基づき学習支援ロボットシステムによる学習支援を洗練した。具体的には、講義や英文読み合いでの学習者のエンゲージメントをより効果的に引き出すために、ロボットの振る舞いを構成するメカニズムを見直した。また、学習者の受講状態や英会話スキルに応じてロボットが適応的に学習コンテンツを制御するメカニズムを調整した。さらに、新たに英会話文脈においてロボットと学習者との相補的教え合いを目的とした学習支援を構想して,開発メカニズムを応用し、適応範囲の拡大を図った。 (3)有効性評価実験:学習支援ロボットシステムを用いて実験を実施し、その結果想定通り学習者のエンゲージメントを促進できることが示唆された。特に、ロボット講義ではエンゲージメントの要因となる学習者の注意をビデオ講義よりも促進し、講義内容の理解も有意に高めることが分かった。一方、エンゲージメントが促進されないケースも見出しており、支援メカニズムの更なる洗練を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
エンゲージメント促進モデルと学習支援ロボットシステムの洗練は、講義および英文読み合いを題材として、当初予定していた通り研究開発を進めることができた。 その一方で、昨年度からのコロナ禍の影響で、システムの有効性評価実験のための準備や被験者確保に時間を要し、システムによる支援の有効性の検証、および支援メカニズムの問題点の抽出についてやや不十分な点がある。また、国内外での研究発表も十分に行うことが困難であったため、研究成果に関する議論を尽くしたとはいえず、モデルやシステムの改善の余地は残されていると考えられる。 以上を踏まえて、現在までの進捗状況を(3)と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、国内外での研究成果発表を増やし、研究成果に関する議論を深めて、問題点を洗い出し、更なるエンゲージメント促進モデル・学習支援システムの洗練を図る。同時に、学習者のエンゲージメント状態をセンシングする機能や、エンゲージメントの持続を可能とするインタラクション機能を実装し、より的確な支援を可能するシステムの開発方法を検討する。
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