研究課題/領域番号 |
20H04298
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研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
山田 恒夫 放送大学, 教養学部, 教授 (70182540)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 学習デジタルエコシステム / 相互運用性 / 個別最適化 / 次世代電子学習環境 / 生涯学習 / 教育デジタルトランスフォーメーション / 国際技術標準 / データ連携 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、高度情報通信社会・知識基盤社会において、生涯にわたり学習を継続するのに必要な「次世代電子生涯学習環境」の実現に向け、要素技術と社会的に未合意の課題について研究開発を行った。人生100年時代を迎え、多様な生涯学習者(特に高齢者を含む成人)が生涯にわたり、パーソナルな学習環境と学習過程(あわせて「パーソナル学習」という)を実現するためのデジタルエコシステムの実現に向けて、当初の計画に即し、「多様性・公正性・包摂性(DEI)」、「持続可能な開発目標(SDGs)」や国際技術標準を視野に入れた国際共同研究として実施することとした。4年間の研究期間で、技術動向やニーズの調査、サブシステムのプロトタイプの開発、デジタルエコシステムへの統合、国内外での実証実験と進めるはずであったが、令和4(2022)年度もCOVID-19パンデミックの影響は深刻で、国際共同研究としての調査や研究組織の構築、高齢者を含むユーザのニーズ調査については一部繰越して、令和5(2023)年度に実施することになった。成果としては、電子書籍型学習プラットフォーム(学習オブジェクトリポジトリ機能含む)のプロトタイプを開発したほか、前年度までに開発したカリキュラム標準・シラバスデータベースのサブシステムを作成し、1EdTech Competencies and Academic Standards Exchange (CASE)技術標準による、メインシステムとのデータ連携を検証した。海外の事例や国際技術標準(1EdTech ConsortiumのOpen Badge、CLR、CASEなどの技術標準)の仕様については引き続き最新動向を調査した。令和4(2022)年度分の成果として書籍分担執筆2編、論文1編、学会発表5件(海外2件、国内3件)を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、「次世代電子学習環境」を構成するサブシステムを、多文化文脈対応学習オブジェクトリポジトリ、高齢者用・周縁化地域用学習活動対応パーソナル学習プラットフォーム、教育情報データ解析システム、デジタルバッジ発行管理システム、カリキュラム標準・シラバスデータベース、「パーソナル学習」を実現する自律型学習管理システム(パーソナルAIチュータ)に区分し、それぞれプロトタイプを開発するとともに、多文化文脈のモバイル環境で実証実験を行うこととしている。基本的に、持続可能性の観点から、相互運用性(Interoperability)を前提に、既存のツールやサービスを利用するマッシュアップ型開発を行い、新たに開発する要素は最小限にとどめる方針である。 コロナ禍および生成系AIの出現という、申請時当初予測できなかった2大事象により遅延しているが、計画を変更の上研究を進めた。令和4(2022)年度(および繰越により令和5(2023)年度)分については、電子書籍型学習プラットフォームのプロトタイプを試作するとともに、コンテンツの実装(科目教材のマイクロコンテンツ化)を行った。また、カリキュラム標準・シラバスデータベース(1EdTechコンソーシアムのCASE技術標準にもとづくリポジトリ)のサブシステムの作成およびデータ更新を行った。遅れている開発要素として、高齢者用・周縁化地域用学習活動センサーの検討、マイクロコンテンツ化した学習オブジェクトの量の充足、「パーソナル学習」を実現する自律型学習管理システム(パーソナルAIチュータ)の実装がある。デジタルエコシステムとして統合されてはいない状況ではあるが、本科研で調査した海外の研究開発動向や国際技術標準については、国内でも教育デジタルトランスフォーメーション(教育DX)の観点から関心が高まり、論文や講演等でフィードバックを行った。
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今後の研究の推進方策 |
繰越分も含め。令和5(2023)年度で、科研としてはいったん終了したが、AWS上に構築した開発環境は、個人研究費等で維持することとしており、引き続き、学習履歴データ、学習目標データ、学習オブジェクトを含むデータの収集を進める。一方、急激な研究状況の変化により対応が遅れているパーソナルAIチュータのプロトタイプの開発については、エッジAIを含むAIデジタルエコシステムの開発動向を見極める必要があり、学会や国際標準化団体における動向を引き続き調査中である。幸い、パーソナルAIについては、いくつかの先行事例が公開されており、個人でハンドリングが可能なオープンなサービスもでてきており、教育の文脈での実装に向けて個人研究を継続するが、なお、複数年を要するものと予測される。
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