研究課題
地球温暖化にともなう海洋環境の変化や人為起源の汚染物質ならびに生態系への影響が強く懸念されており,内湾から採取した連続する堆積物試料の各種解析から,人新世以前と以後との海洋環境の変遷を解明することを目的としている。そのため,精度の高い年代軸を加え,重金属元素,有機・無機炭素,硫黄,酸素量,環境DNAなどの湾内における物質循環と生物生産やその内容,底層の酸化・還元度の変動を数十年単位の時間解像度で定量的に復元し,環境変化の要因,過程,変化の程度,それらの相互作用などを明らかにする。ダイバーによる海底表層コア(50cm)の直接採取を、浦ノ内湾の湾奥、湾央、湾口の3点で実施した。特に、湾奥と湾口の堆積物表層コアは、シルト質泥であり、X線CT・帯磁率・年代測定の結果から,1900年代以降に連続で堆積していた。XRFコアスキャナーによる連続元素分析では,重金属元素(Cu,Zn,Ni)が,湾奥では,コア表層より約18cm付近から変化し,湾央では,約36.5cm付近からの変化が見られた.これらは、1960年代以降に顕著に増加していた。また,Mnも,同様な深さから減少しており,海底環境が還元的になったと推定される.さらに、EA-IR-MSによる有機物分析から有機炭素量(TOC)と炭素・窒素同位体比は、湾奥コアで約25cm、湾央コアで約45cmから変化しており、養殖がおこなわれた時期以降と一致しており、人為的な影響があったと考えられる. また、多産する貝化石の同定も行い、それらから湾内の生態環境変化について考察中である。以上の成果については、国際論文(査読有)1本、学会発表3件をおこなった。
2: おおむね順調に進展している
浦ノ内湾の海底堆積物の湾奥の4Mコアの概要、また、追加サンプリングを実施し、表層堆積物のダイバーによる直接採泥をおこない、それらの試料解析も順調に進んでいる。これらの結果は、1年目に国際論文(査読有)1本、学会発表3件、2年目にも同様に国際論文(査読有)1本、学会発表3件で公表済みである。ただし、コロナ禍であったため、湾央における追加の6Mコア試料の採取が1年目、2年目と実施できず延期になっており、3年目の2022年6月に実施予定である。
本申請研究では、記録が残りやすい内湾から採取した連続する堆積物試料の各種解析から,人新世以前と以後の海洋環境の変化や人為起源の汚染物質ならびに生態系への影響を解明することを目的としている。この目的の達成するための、海底コア採取法や各種解析法は本研究で確立させており、今後、湾央で新たに採取するコア試料の測定を同様に追加でおこなう予定である。それらの結果を総合的にまとめ、都会ではない地方である高知県内湾の人新世を挟んだ環境汚染や海底環境の変遷を明らかにし、他地点データとの比較もおこなう予定である。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Science of The Total Environment
巻: 770 ページ: 145220
10.1016/j.scitotenv.2021.145220