研究分担者 |
山本 裕二 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (00452699)
星野 辰彦 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 主任研究員 (30386619)
井尻 暁 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (70374212)
谷川 亘 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 主任研究員 (70435840)
近藤 康生 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (90192583)
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研究実績の概要 |
産業革命以降、人間が地球環境に負荷を与えてきた記録が残されており、新たに「人新世 (Anthropocene)」と呼ばれる地質年代が提唱されている(Crutzen and Stoermer,2000)。東京湾、伊勢湾、大阪湾など工業地帯周辺の内湾での堆積物の解析例はあるが、工業地帯の影響がない、地方の内湾での堆積物の解析例は少ない。本研究では、高知県中央部に位置する浦ノ内湾の海底堆積物に記録された人新世の環境変動 について検証することを目的とした。浦ノ内湾の湾奥(水深9.7m)で海底表層コアを潜水士によって直接採取された。また、4Mのロングコアは、バイブロ採取法によって、湾奥、湾央で採取されている。これらのコアをX-CTによる画像解析とCT値、また、MSCLによる帯磁率などの非破壊分析を行い、半割後、digital imageで画像撮影, XRF core scanner (ITRAX)を用いて元素組成分析を行った。さらに、1cm間隔で深さ方向に切りわけ、凍結真空乾燥を行い、粉末状にして、有機物分析と年代測定を行った。 内湾の堆積物はシルト質泥であり、堆積構造の乱れは無く、コアの下位に行くほど圧密が増していた。ITRAXデータと放射性年代から、重金属元素(Cu, Zn, Ni, Cd, Cr)が、湾奥では1950年代から微増、1964年から急増し、現在、約2倍近く増加しさらに増加する傾向にある。1955年付近から全炭素有機物量(TOC)が増加し、また、有機物の炭素・窒素同位体比も大きく変化しており、この地域で貝や魚類の養殖がはじまった時期と一致し、有機物の質の変化、人糞や肥料などの流入の影響が考えられる。Mn濃度は、湾奥で1977年頃から減少し始めており、有機物量の増加から20年後に湾奥の海底環境が還元的になっていったことを示している。
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